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牛白血病防疫対策について
茨城県県北家畜保健衛生所


 1.牛白血病とは

   牛白血病は,体表リンパ節および体腔内リンパ節の腫大などの異常を示す疾病で,地方病性(成牛型)と散発型に分類されます。中でも地方病性牛白血病は,牛白血病ウイルス(以下BLV)の感染により引き起こされる腫瘍性の全身性疾患で,一般的に4歳から8歳で発症することが多いです。近年我が国での発生が増加しており,生産現場での被害も増大しています。BLVはリンパ球に感染し,血液や乳汁,注射器や直検手袋,除角器等の医療器具を介して伝播します。


牛白血病発症牛
(全身のリンパや主要臓器が腫瘍化した症例)

 2.発生状況
   農林水産省によると昨年は全国で2,090頭の牛がBLVを発症し,4年間で倍増しました。県内の食肉処理場でも同様に発生が多くなっています(下図)。と場検査で発見された場合は全部廃棄処分され,中でも和牛肥育牛の損失額は大きく,深刻な問題になっています。BLV感染牛の発症率は5%以下と言われ,感染してもすべての牛がBLV を発症するわけではないという理由が,感染が拡大した一因であると考えられています。




 3.発生予防対策
   BLV感染を予防するためには,一つの対策を行っただけでは効果が薄いことから,初乳を介した感染対策,吸血昆虫対策,人為的な感染ルート対策を併用することが重要です。
(1)初乳を介した感染対策
 初乳を介した感染対策としては,非感染牛の初乳または初乳製剤を与えます。しかし,感染母牛の場合は乳汁中にBLV感染リンパ球が存在するため,その牛の初乳または感染の可能性があるプール初乳を子牛に与える場合,加温器を用いて60℃で30分間加温(温度・時間管理を適切に行う)するか,あるいは一度完全に凍結・融解させ感染性を失活させた上で給与します。
 そして,初乳を与えた後はできるだけすみやかに母牛と分離して,その後の乳汁を介した感染リスクを回避します。
(2)吸血昆虫対策
 BLV は血液を介して伝播することから,吸血昆虫(アブやサシバエなど)の発生が多い夏季を中心に対策を講じます。
 具体的には,牛舎周囲にネットを設置し,アブ等の侵入を防止したり,市販のペルメトリン乳剤を週2回程度牛体に散布し,アブ等による吸血機会を減じます。
 近年,肉牛で肥育末期に牛白血病を発症するケースが増えております。感染時期が早いことが通常より若い年齢での発症の可能性を高めることが指摘されています。そこで肉牛においても感染母牛から子牛が生まれた場合,適切な処理をした初乳給与後できるだけ速やかに母牛から離すことで感染を防止します。
(3)人為的な感染ルート対策
ア)注射
 注射する場合は一頭一針を遵守します。他の疾病の伝播のリスクもあるので,同じ注射針を複数の牛に用いることは決して行うべきではありません。
イ)直腸検査
 直腸検査は一頭ごとに直検手袋を交換します。明らかな出血が認められない場合でも,肉眼的には確認出来ない出血をしていることがあり,その程度の血液量でも直検手袋を介してBLV伝播は成立します。妊娠鑑定時に用いるエコープローブもBLV伝播の危険性があることから,カバーで被覆し て一頭ごとに交換します。
ウ)除角,去勢,削蹄,耳標・鼻環装着などによる出血
 除角,去勢,削蹄,耳標や鼻環装着に際しては,一頭ごとに水の入ったバケツで使用器具の有機物を落とした後,消毒液を入れた別のバケツに一定時間浸漬します。
 なお,感染牛の出血は感染源となり,また非感染牛が出血している場合,創傷面からBLVが侵入することから,これら出血を伴う作業を行った場合は,確実に止血を行います。