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平成25年度畜産施策方針と重点施策について
茨城県農林水産部畜産課長 山本 敏弘
 現状及び課題
  この度の定期人事異動により畜産課長を拝命しました。本県畜産の振興に全力で取り組んで参りますのでよろしくお願いいたします。
 御承知のとおり,本県の平成23年農業産出額は4,097億円で,平成20年から4年連続で全国第2位となっております。このうち畜産産出額は1,079億円で,畜産は農業産出額の26%を占める基幹産業のひとつとなっています。なかでも鶏卵は全国第1位,養豚は全国第2位の産出額であるなど本県は全国有数の畜産県であり,首都圏を中心に畜産物を安定的に供給する基地として重要な役割を担っています。
 県では,平成15年から消費者のベストパートナーとなる茨城農業の確立を目指し,「茨城農業改革」に取り組んできました。その取り組みにおいて,銘柄畜産物である常陸牛が,各種メディアを活用したPRを重点的に展開した結果,県内外における知名度が高まり,平成24年度出荷頭数が農業改革開始時の約3倍となる7,781頭に増加したほか,本年4月に開催された全国銘柄ポークグランドチャンピオン大会でローズポークが全国3位に入賞するなど着実に成果が現れてきています。
 しかしながら近年,畜産を巡る情勢は,とうもろこし主産地の干ばつや一時期の円安などの影響により,穀物価格や原油価格が高騰し,生産コストが増大する一方,牛肉などの畜産物の消費量は景気低迷の影響などから伸び悩み,畜産物価格も低迷するなど,畜産農家は厳しい経営環境にあります。
 2年前に発生した東日本大震災や東京電力(株)福島第一原子力発電所事故により,本県の畜産は,原乳の出荷自粛や畜産物の風評被害など大きな影響を受けました。
 また,畜産農家には,霞ヶ浦等への環境負荷削減を図るため家畜排せつ物の適正管理や,中国での鳥インフルエンザ発生の影響から,農場への家畜伝染病の侵入防止への取り組みが求められています。
 さらに,本年3月には, TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉の参加表明があり,農林水産物の生産額が全国で約3兆円減少すると試算されるなど,農業分野への大きな影響が懸念されるところです。

 対応策
  このような状況のなか,県としましては,畜産農家に対し,国の経営安定対策事業などを幅広く周知し,制度を有効に活用するとともに,茨城農業改革の施策の展開方向である儲かる農業の実現を目指して,「生産基盤の増強」「畜産物の流通促進及び畜産経営の体質強化」「家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産」「畜産環境対策の充実」「試験研究の推進と指導体制の充実」の5つを施策の柱として,本県の畜産振興を図っていきますので,皆様方の一層のご理解とご協力をお願いいたします。

 重点施策
  (1)生産基盤の増強
・産肉能力や繁殖能力等の生産性の向上を図るため,牛群検定の活用,優秀な種雄牛の作出,系統豚の能力向上などにより改良を推進します。
・飼料畑等の造成・整備と併せて畜舎等の農業用施設を整備するとともに,水田や耕作放棄地等未利用地の活用など耕種農家と畜産農家の連携を進め,飼料生産基盤を強化します。
(2)畜産物の流通促進及び畜産経営の体質強化
・本県の銘柄畜産物である常陸牛,ローズポーク,いばらき地鶏の一層のブランド力向上を進め,それらを牽引役とした本県畜産物の販路拡大や消費拡大を図ります。
・畜産経営安定対策を推進し,畜産経営の安定強化を図ります。
・畜産物の放射性物質の検査体制を維持し,的確な実施と迅速な公表を行うとともに,畜産物中の放射性物質の低減のための飼養管理技術の情報提供を行います。また,風評被害対策として,県産畜産物のPR活動を展開します。
(3)家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産
・家畜伝染性疾病の発生やまん延の防止のため,飼養衛生管理基準に基づく徹底した指導を実施するとともに,万一の発生に備えた危機管理体制の充実を図ります。
・畜産農家自らが行う家畜伝染性疾病の発生予防対策を支援し,市町村ごとの防疫体制を整備します。
・食の安全・安心を確保するため,オーエスキー病の清浄化対策や動物用医薬品の適正使用を推進するとともに,継続して24カ月齢以上の死亡牛全頭のBSE検査を実施します。
(4)畜産環境対策の充実
・家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律に基づく家畜排せつ物の適正管理の指導を行うとともに,管理基準に適合した家畜排せつ物処理施設・機械の整備を支援します。
・霞ヶ浦流域での畜産からの環境負荷削減を進めるため,必要な施設機械整備の支援や需要と供給のマッチングなどを行い,霞ヶ浦流域内で生産された堆肥の流域外での利活用を促進します。
・家畜排せつ物の堆肥化以外の新たな利用を進めるため,畜産バイオマス燃料としての利活用を推進します。
(5)試験研究の推進と指導体制の充実
・常陸牛生産の基礎となる種雄牛造成のための産肉能力検定,遺伝子技術を活用した系統豚の改良,育種を進めます。
・家畜排せつ物による環境負荷削減を図るため,畜産環境保全技術の開発に取り組みます。
・本県に適した飼料作物の品種選定や,先端技術開発に取り組みます。
・畜産物の差別化を図るため,牛肉や豚肉のおいしさに関する研究を進めます。