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牛肉の「オレイン酸」に関する取り組みについて |
茨城県畜産農業協同組合連合会 |
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牛肉の美味しさに関する要因の一つとして,脂肪中に「一価不飽和脂肪酸(MUFA)」割合が高いほど「融点が低く口溶けの良い脂肪」となることが,各研究結果として公表されております。また「オレイン酸」が,MUFAの大半を占めていることも判明しております。今後の和牛に関する評価は,脂肪の量(霜降り志向)から質(美味しさ)へと変化し,オレイン酸割合等の「数値」が「美味しさの指標」となる可能性も示唆されております。
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本会では,全畜連・雪印種苗・全国生産者とで組織する「名人会」の活動として,食肉脂質測定装置を活用し牛肉の脂肪に関する測定・分析・開示の取り組みを平成23年4月から開始しました。これは芝浦でも初の取り組みであり,市場関係者からの関心も高まっております。測定装置の活用に際しては,製造者(相馬光学)と販売者(富士平工業)立会のもと検証を行い,精度は全国和牛能力共進会の測定機と同レベルと認められております。
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これまでに(平成25年2月〜平成26年12月),計2,170頭の和牛に対し測定を行いました。測定データが増えるにつれ「どのような和牛がオレイン酸割合が高いのか」その傾向がつかめてまいりました。常陸牛の美味しさを向上させる観点から,(途中経過ではありますが)現時点での報告をさせていただきます。
【@柔らかく良質な脂はオレイン酸割合も高い】 実際に測定してみると「柔らかくて光沢のある」脂質はオレイン酸割合が高いことに気づきます。これは,買参人の方々が以前から言っていたことと同じであり,プロの目利きと機械による測定値が等しいことの現れです。 【A去勢よりも雌の方がオレイン酸割合が高い】 期間中に91回の測定を行いましたが,毎回の結果を性別の平均値で比較すると,ほとんどの場合において雌の方が高い結果でありました。また,全データの平均値でも「去勢55.8<雌57.1」という結果でした。常陸牛は去勢中心の銘柄ですが,今後「雌を増やす」ことも課題の一つと考えます。 【B長く飼った牛の方がオレイン酸割合が高い】 生後月齢によってオレイン酸割合を比較してみました。出荷牛の大半が生後29〜31ヶ月齢であり(月齢別でデータ数にバラツキがあるため絶対とは言えませんが),月齢の長い牛ほどオレイン酸割合が高い傾向が見られます。美味しい牛肉にするには少しでも「長く育てる」ことがポイントであると思われます。 【C体型・肉質の良い牛はオレイン酸割合も高い】 本会では枝肉「研究会」を定期的に開催しており,出品においては発育・体型・血統等の優れた牛を選定します。研究会に出品されない牛は「一般出荷」として販売します。また「共励会」は年に1度の開催のため,研究会より上に位置づけされる最も名誉な大会です。共励会の出品牛は,研究会以上に厳選されるため肉質及び販売成績も最高の成績となります。そのため,販売成績を比較すれば「一般出荷<研究会<共励会」の順となるのが一般的ですが,オレイン酸を比較した結果も「一 般出荷55.5<研究会56.5<共励会56.7」の順でありました。美味しい牛肉を作るためには,これまで同様に「良い牛を多く作る」ことが大切です。 【Dオレイン酸割合は血統による影響が大きい】 和牛は肉質と増体を考慮し改良が進められてきました。以前から,但馬系は美味しい・気高系は肉質が粗い等との声がありましたが,オレイン酸データを父牛別に比較する際,毎回似たような順序に並ぶことに気がつきます。今回の集計でも父牛別でのトップ(58.0)と最下位(54.1)とでは,その差が3.9ポイントもありました。オレイン酸の比較では1ポイントの差でも美味しさに違いを感じるとの研究結果もあり,血統による味への影響は大きいものと推察されます。常陸牛の生産においても,サシ(霜降り)を重視しながらも「脂質の良い牛となるような血統を考慮」することも大切かと考えます。 ![]()
オリーブオイルに多く含まれることで有名な「オレイン酸」は,実は和牛肉に多く含まれております。和牛肉100g中のオレイン酸量(約22〜23g)はオリーブオイル大さじ1杯分(約11.6g)の倍量にも相当します(日本女子大資料より)。また,オレイン酸にはコレステロール減少,種々の病気や老化の原因となる酸化を抑制,血圧降下効果があることもわかっており,消費者には「美味しくて健康に良い常陸牛」をたくさん食べてもらえるようなPR戦略,生産者には認識を深め飼養管理に活用することが,今後の課題であるかと考えます。生産者の皆様には,本会で特許を取得している「米油(飼料用ライスオイル)」を給与することでオレイン酸を向上させることも可能でありますので,ご検討いただければ幸いです。
各種銘柄牛はブランド化に向け努力をしておりますが,これからの和牛ブランドには「美味しさ」と「明確な差別化」が必要になると考えます。これからも,常陸牛の美味しさを明確にPRできるよう,関係する皆様方と協力してまいりますので,よろしくお願い致します。 |
畜産茨城
平成27年1月号目次 1.常総市 佐藤宏弥・博子夫妻 第53回農林水産祭 天皇杯受賞 2.水田をフルに活用した土地利用型畜産の確立に向けて 3.家畜ふん堆肥の速効性肥料効果の解明と実用化技術の開発 4.第17回関東地区ホルスタイン共進会 5.オフトひたちなか畜産フェア 6.第14回茨城県堆肥コンクール表彰式及び土づくりセミナーの開催 7.鹿行地域におけるオーエスキー病(AD)清浄化への歩み 8.牛肉の「オレイン酸」に関する取り組みについて 9.ローズポークおいしさまるごとキャンペーン 10.たまごニコニコ料理甲子園・畜産センター公開デー売上金寄付 |
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