「組織と歩む肉用牛肥育経営」



木 村   靖 さん


 肉用牛を取り巻く情勢の変化に対応し、肥育牛の品種を乳用種から交雑種に切り替えたが、切り替えに当たっては、優れた飼養管理技術を習得し、交雑種肥育経営では致命傷となる事故率を低く抑えており、更に肉質についても飼料給与技術の工夫によりB3以上が80.6%でかなり高い成績であり、地域の見本となる経営である。
 木村 靖さんの所属する茨城みどり農協(旧山方町農協)では、牛舎の農家へのリースや、哺育センター及び堆肥センターを運営などにより、肥育農家の経営経費と労力を軽減することにより物量を確保し、乳用種期においては「山方ピュア牛」、現在の交雑種では「山方牛」の名称で、銘柄牛肉として生協等に有利販売を行い農家経営の安定に努めている。



 常陸大宮市(旧山方町)は、稲作等が主体で作付けされ、山林が占める割合が70%を占める山間農業地域である。
 畜産については、肉用牛の飼養が多く、飼養戸数は、30戸であるが、飼養頭数については、2,170頭と本県肉用牛飼養頭数で、第7番目の飼養頭数となっている。
 また、平成16年10月16日に、近隣の5町村との合併により「常陸大宮市」(旧山方町・旧大宮町・旧緒川村・旧美和村・旧御前山村)となった。



@ 肥育に関する勉強会や先進地視察研修等の実施により、飼養技術の向上に努める。(哺育事故低下、乳用種〜交雑種切替時)
A 販売牛の肉質改善を図るために飼料内容の検討を行い格付け「B3以上」率の向上を図る。(15年のB3以上率は80.6%)
B 綿密な飼養管理による事故率の低下(事故率1.3%)を実現
C 経営者個々の経営内容の公表による肥育部会の経営検討会開催(毎月)

※地域内の各種事業等の取り組みについて、常に経営にプラスとなるように先見の目をもって、今日に至っている。




S.54 乳用種肥育 60頭 親(父)の他界により、会社勤めを辞め、経営を継ぐ。


130頭
S.59 乳用種肥育 170頭 畜産振興資金により、自宅牛舎を建て、地域ブランド「ピュア山方牛」の生産。
H.5 乳用種肥育 140頭

交雑種肥育 40頭 乳用種肥育から、F1交雑種の導入始める。

黒毛和種 5頭
H.6 稲作等
町の受託組合(個人対応)により、耕起・代かき・田植え・刈り取りを行い、藁の有効利用をしている。
H.10 交雑種肥育 140頭 乳用種肥育から交雑種肥育経営へ転換する。「山方牛」として、生協等に販売
H.12 交雑種肥育 150頭 平成12年12月より、飼料内容の変更。
H.13 交雑種肥育 159.8頭 当協会による経営診断(コンサル)を実施。
H.14 交雑種&黒毛和種 160.1頭 交雑種経営に黒毛和種を取り入れる。
H.15 交雑種&黒毛和種 158.0頭 現在に至る。

 





地域の農協運営による堆肥センター利用により、堆肥処理作業の負担が軽減できるとともに、良質な堆肥を管内及び他地域の耕種農家へ還元している。



 





 経営開始当初は、乳用種哺育育成経営に始まり→哺育〜肥育までの一貫経営に移行→乳用種の肥育専門経営→規模拡大を図る→付加価値を高めた生産を目指した乳用種雌牛の個体管理肥育の実施(ブランド牛)→自由化による輸入肉の影響が少ないF1交雑種肥育への転換を図る。

 以上のように、収益の向上及び経営のより安定化を追求する中にあって、規模拡大や肉質向上及び飼養方式、品種の変更等による経営の転換をしながら資本の蓄積を図ってきた。
 今後、牛肉の需給動向見ながら経営のより安定化目指すためには、場合によっては肉専用種(黒毛和種)への移行(リスク分散)も見据えた将来を考えている。