「環境を考えて 〜糞尿と街路樹等未利用資源を有効活用」

酪農経営  渡辺和則
所在地:茨城県鹿島郡鉾田町紅葉 910−10


渡辺和則さんのご家族  本人向かって左端

1.経営の概要

 酪農部門と肥育部門に分かれている。酪農部門は、和則夫婦が中心となって行い、夫は牛群検定の成績を元に飼養管理全般と搾乳、堆肥管理など、妻は哺育、育成牛の管理、搾乳、家事、堆肥化作業の手伝い等を担当している。肥育部門は、両親が管理(別経営管理)している。
 また、ヘルパー利用組合に加入しており、休日には夫婦それぞれが自由に過ごす時間をもち労力的にも精神的にもゆとりを持った経営を行っている。
 酪農部門、肥育部門の飼養管理等の役割分担を家族で話し合い、家族一人一人の役割と責任を明確にし、それぞれの能力に応じた家族経営協定を結んでいる。
 この事により、経営方針や環境改善について話し合うようになり、以前より経営に関しての充実感を持つことが出来るようになった。

労働力の構成                      平成12年12月現在

区分 続柄 年齢
(才)
農業従事日数 備考
(日) うち畜産部門
(日)
家族 本人 46 340 340 酪農 飼養管理 飼料作
42 280 280 酪農 育成 搾乳
67 280 280 肥育 全般(肥育のみ)
67 300 300 肥育 部門担当(肥育のみ)

土地所有と利用状況                         単位:a

区分 実面積 畜産利用面積  備考      
  うち借地
 600  200  600  
畜舎・運動場  130    130  
共同利用地 2,500 2,500 2,500  

2.低コスト化のための廃棄物利用

1) 堆肥舎、機械用倉庫建設における低コスト化
 堆肥舎の基礎立ち上げは、専門家に依頼したが、上に載る屋根や骨組みに関しては、農業をやめた者から温室を安く分けてもらい、組み立てている。
 機械用倉庫も基礎は夫婦と友人の3人で仕上げ、上の部分は産廃業者から出た丸太を製材して利用している。このように経費を安くするための対策を行っている。
2) ふん尿処理における低コスト化
 平成10年3月より産業廃棄物処理業者と提携して、造園業者や道路開発業者から出る樹木や、木くずをチップにしたものの供給を受け堆肥作りを始めた。
 チップにふん尿を混ぜて堆肥化を図ることにより、低コストで堆肥生産できるだけでなく、地域の廃材等の資源も有効に利用でき、循環型社会が生まれてくるのではないかと考えられる。
 生産した堆肥は自家菜園で様々な作物や草花を栽培して、堆肥の効果や影響を調べ、堆肥の有効性を実証し、販売時には買う人に必ず堆肥を見てもらい、納得の上販売している。
 堆肥を使ってみて問題点があった場合には改善に努め、種々農家のニーズにあった堆肥生産を行っている。

3.自給飼料の生産

生産費低減のため乾草は近くにある航空自衛隊百里基地内の、草地(オーチャードとイタリアンの混播)50ヘクタールを2軒共同で、7月上旬頃から8月上旬までに刈り取り、ロールベールにして、運ぶという作業体系で行っている。成牛、育成牛に与える乾草は、年1回のこの時期の物で間に合っている。飼料畑は6ヘクタールでトウモロコシだけで、4月下旬に播種し、刈り取りは2軒共同で行っている。8月下旬から1週間で通年給与できるサイレージを確保している。

4.経営の推移

年号 搾乳牛頭数 備       考
昭和 8 祖父が分家し酪農を始める
   23 10 畑作と兼業 飼養頭数10頭になる
   48 20 酪農専業となる。牛舎パイプライン・バルククーラーユニットを購入。初妊牛10頭を千葉県より導入
   53   海外派遣農業実習生でアメリカ カリフォルニアへ留学
   55   牛群検定組合加入。11月結婚
   62 25 父旧常南酪農組合長となる。 父より経営移譲
平成 1   ヘルパー利用組合加入
    8   肥育牛舎建設 育成牛舎増築
   13 29 堆肥舎完成
現在の飼養頭数  成牛29頭   育成牛23頭

5.環境保全対策

家畜排せつ物の処理は混合処理方式で行っている。
 雑木林を造成した際に出る枝葉や木くずをすり潰したチップ140m
³と流下式牛舎からスラリー状ふん尿120,000m³(4,000Lバキュームカー30台)を堆積攪拌し醗酵する。
 以後2週間に1回の割合で切り替えしながらふん尿を入れていく。この作業を3ヶ月間(6回切り返し)行う。
 この処理方法はトップターン方式といい、ランニングコストとして堆肥の切り返し作業にかかる軽油代だけですむため、低く抑えられている。
 トップターン方式での醗酵処理に続いて第2次醗酵をさせる。

6.地域活動

 昨年の夏休み以後、子供を連れて見学に来る親子が増えて来ているので酪農業を理解してもらうため、農場に気軽に立ち寄れる環境作りに勤めている。デンマークミニホースの雌雄を飼っているのも、近所の人達や子供達がいつでも遊びに来てもらえるようにとの配慮からだ。
 地元中学校で酪農体験を希望する生徒のために1日実習の場を提供している。農業高校からは2泊3日の実習生も受け入れている。
 畜産業を続けていく上で、畑地へのふん尿還元を適正に行うことは不可欠であるので、産業廃棄物処理業者と提携して、木のチップを供給してもらい堆肥作りを始めた。供給を受ける木のチップは地元造園業者が雑木林の造成や街路樹剪定時に出る枝葉や木くずをすり潰して出来たチップであり、地域資源の有効活用にもつながっている。

7.今後の目指す方向

 家族経営協定を見直し乳牛部門・肥育部門・堆肥部門とに分けて運営し、乳牛部門は搾乳牛60頭、育成牛40頭、合計100頭規模に増頭する予定、将来施設が整えば地域の生ゴミを原料にした堆肥生産も計画している。

小・中学校や農業高校・農業大学校から農場見学や農場での実習生の受け入れの要望があるので地域の子供達が気軽に見学や実習できる設備を整備したいと考えている。