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平成26年度畜産施策方針と重点施策
茨城県農林水産部畜産課長 山本 敏弘


  昨年度に引き続きまして畜産課長として本県畜産の振興に全力を尽くして参りますのでよろしくお願いします。
 平成23年3月の東日本大震災や東京電力(株)福島第一原子力発電所事故による風評被害等により,取引の停止や相場の下落など販売が伸び悩んでいた本県農林水産物は,徹底した放射性物質検査の実施や販売促進キャンペーンなどの復興活動を展開してまいりました結果,魚介類等一部を除いて事故前の状況までほぼ回復してきている状況にあります。
 また,本県の平成24年農業産出額は4,281億円で,前年より184億円増加し,平成20年から5年連続で全国第2位の地位を確保しています。このうち畜産については,ほぼ前年並みの1,075億円で,畜産産出額は農業産出額の約26%を占める基幹産業であり,特に,鶏卵は全国第1位の産出額を誇り,首都圏を中心に畜産物を安定的に供給する基地として重要な役割を担っております。
 さらに,本県では,平成15年から「茨城農業改革」に取り組んでおり,「儲かる畜産経営」実現のため,特に常陸牛などの銘柄畜産物について,各種メディアを活用したPRを重点的に展開した結果,県内外における知名度が高まり,平成24年度の常陸牛出荷頭数は7,781頭と,10年前に比べて約3 . 5倍に増加し,全国でも有数の出荷規模となる銘柄牛に成長するなど,改革の成果が着実に現れてきたものと考えられます。
 しかしながら,近年,畜産を巡る情勢は,TPP交渉の進展やオーストラリアとの日豪EPA交渉等により海外との競争にさらされる中,穀物価格や原油価格の高騰などの影響により,生産コストが増大するなど畜産経営は極めて不安定な状態が続いております。
 特に,配合飼料価格については,配合飼料価格安定制度により補てん金は発動されているものの,生産者負担額は過去最高レベルとなっており,輸入飼料への依存度が高い畜産経営は,非常に厳しい状態になっています。
 また本県では,霞ヶ浦の富栄養化や混住化が進む中,県民の環境に対する関心が高まり,畜産経営においても環境負荷削減など環境保全型農業が求められるなど,課題を抱えています。

 対応方針
  これらの課題に対応するため,県としましては,国の畜産・酪農経営安定対策事業等を有効に活用し,畜産を取り巻く状況に的確に対応しながら,「茨城農業改革大綱(2011-2015)」や「いきいきいばらき生活大県プラン」等に基づいて,消費者のベストパートナーとなる茨城農業の確立をめざして「儲かる畜産経営」の実現に取り組んでまいります。
 具体的には,消費者が求める安全・安心で,高品質な畜産物を実現するため,優良な種畜を活用した家畜改良・生産性向上に取り組むとともに,アジア地域で発生している口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザ等の防疫対策や飼養衛生管理の徹底,新たな付加価値を生み出す畜産物の開発・提供を進めるほか,さらなるブランド力を図るため,銘柄畜産物を牽引役として首都圏に向けた県産畜産物の販路拡大対策を実施します。
 また,輸入飼料に依存しない畜産経営基盤づくりのため,耕畜連携による稲発酵粗飼料や飼料用米等の利活用に積極的に取り組むとともに,飼料用トウモロコシなど自給飼料の増産に向けた取組を支援してまいります。さらには家畜排せつ物の適正管理と有効利用に加え,農外利用を進めながら,畜産農家の安定経営の実現に向け取り組んでまいります。
 県といたしましては,今年度の重点施策として「生産基盤の増強」,「畜産物の流通促進及び畜産経営の体質強化」,「家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産」,「畜産環境対策の充実」,「試験研究の推進と指導体制の充実」の5つを柱として,本県の畜産振興を図ってまいりますので,皆様方のなお一層のご理解とご協力をお願いします。

 重点施策
  (1)生産基盤の増強
 家畜の改良を進めることにより,産肉能力や繁殖能力等の生産性の向上を図るとともに,水田や耕作放棄地等未利用地の活用や耕種農家と畜産農家の連携を進めることで,飼料生産基盤を強化して輸入飼料に依存しない安定した畜産経営の確立を目指します。
(2)畜産物の流通促進及び畜産経営の体質強化
 本県の銘柄畜産物である常陸牛,ローズポーク,いばらき地鶏の一層のブランド力向上を進め,それらを牽引役とした販路拡大を図るとともに,畜産経営安定対策を推進するほか,畜産農家の経営意欲の向上を図ります。
(3)家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産
 家畜伝染性疾病の発生やまん延防止を図るため,飼養衛生管理基準に基づく徹底した衛生指導を実施しますとともに,口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の万一の発生に備えた危機管理体制を充実してまいります。また,オーエスキー病の清浄化対策や動物用医薬品の適正使用を推進しますとともに,24か月齢以上の死亡牛全頭の牛海綿状脳症検査を継続することにより,食に対する安全・安心を確保してまいります。
(4)畜産環境対策の充実
 県民の環境に対する関心が高まり,より一層の環境に配慮した畜産経営が求められていることから,引き続き環境負荷を削減するための施設整備や堆肥の適正な利活用を推進するほか,家畜排せつ物の堆肥化以外の新たな処理・利用方法について検討します。
(5)試験研究の推進と指導体制の充実
 受精卵移植等の繁殖技術,優良精液等による家畜改良,飼料作物新品種の育成等に係る試験研究及び家畜ふん尿処理技術の確立などを推進するともに,畜産情報の収集・提供や技術普及による畜産農家の経営及び生産技術の高度化を図ります。特に,畜産物の差別化を図るため,牛肉や豚肉のおいしさに関する研究を進めるなど高度な生産技術の開発に取り組みます。