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平成24年度 畜産施策方針と重点施策
茨城県農林水産部畜産課長  佐野 元彦


 現状及び課題

  この度の定期人事異動により畜産課長を拝命 しました。本県畜産の振興に全力を尽くして参 りますのでよろしくお願いいたします。
  ご承知のとおり,本県の平成22年農業産出額 は4,306億円で,前年に比べ136億円増加し3年連 続で全国第2位になっています。このうち畜産 は,全体の約4分の1の1,125億円を占め,本 県の基幹産業の1つであります。本県は,部門 別産出額でみると,鶏卵が全国第1位,養豚が 全国第2位,乳牛が第8位,肉牛が第10位であ るなど,全国有数の畜産県であり,首都圏へ畜 産物を安定的に供給する基地として重要な役割 を担っています。
  しかしながら,近年,畜産を巡る情勢は,穀 物価格や原油価格の高騰による生産費の増大に 加え,景気低迷による畜産物消費の伸び悩みや 価格の低迷など畜産経営は大変厳しい状態が続 いています。また,昨年発生した東日本大震災 は,本県畜産にも大きな影響をもたらし,原乳 の廃棄や畜舎等の倒壊など約9億円の被害が発 生しました。
 また,東京電力(株)福島第一原子力発電所事 故に伴い,汚染された生乳が出荷制限を受ける とともに,昨年7月には,福島県等において放 射性物質に汚染された稲わらの給与により,暫 定規制値を超えた牛肉が流通したことから,牛 肉の需要が急激に落ち込み市場取引単価がほぼ 半値になるなど,本県の畜産経営に大きな影響 を与えました。
  一方,飼料価格については,国際的な穀物 需給の逼迫などにより,国際的な相場が高値で 推移し,断続的に補てん金が発動される状況と なっており,輸入飼料への依存度が高い畜産経 営は不安定な状態になっています。また,構造 的な問題として,本格的な少子・高齢時代の到 来による食生活・嗜好の変化や,国内外の産地 間競争の激化など生産者を取り巻く環境が変化 する中で,担い手の減少,不適切な家畜排せつ 物利用による環境への負荷など,多くの課題を 抱えています。



 対応方針

  これらの課題を解決するため,国では昨年 12月,総額1,738億円に達する平成24年度の畜 産・酪農経営安定対策を発表し,牛肉や豚肉の 政策価格を全て据え置くとともに,酪農対策と して加工原料乳やチーズ等向け生乳に対する助 成制度の拡充,肉用牛・養豚・養鶏等,畜種ご との経営安定対策を講じました。
  このような中,県としては,畜産農家に対 し国の経営安定対策を幅広く周知し,制度を有 効に活用しながら「茨城農業改革大綱(2011- 2015)」の柱である,いばらきから発信する 「信頼ブランド」や未来につながる茨城農業の 実現に取り組みます。
  具体的には,消費者が求める安全・安心で, 品質が高い畜産物の生産を進めるほか,新たな 付加価値を生み出す畜産物の開発・提供を進め ます。また,さらなるブランド力の向上を図る ため,銘柄畜産物を牽引役として首都圏に向け た県産畜産物の販路拡大対策を実施します。さ らに,家畜排せつ物の適正管理と有効利用を進 めながら,稲発酵粗飼料や飼料用米等の利活用 などに積極的に取り組み,本県の畜産農家が安 心して経営できるような施策を推進します。
  同時に,県では,放射性物質の汚染対策と して,昨年度,食肉衛生検査所や農業総合セン ター及び畜産センター等に簡易型放射線測定装 置を導入しました。この4月からは新規制値が 設定され,より一層厳しくなったことから,引 き続き原発事故の収束状況を注視しながら,畜 産物や自給飼料の放射性物質検査を徹底して行 い,消費者から安心して食べて貰えるよう,検 査結果を的確に公表し,安全性をPRして まいります。
 県といたしましては,今年度の重点施策とし て「生産基盤の増強」,「畜産物の流通促進及び 畜産経営の体質強化」,「家畜衛生対策の充実と 安全な畜産物の生産」,「畜産環境対策の充実」, 「試験研究の推進と指導体制の充実」の5つを 柱として,本県の畜産振興を図ってまいります ので,皆様方のなお一層のご理解とご協力を お願いします。


重点施策

(1)生産基盤の増強
  家畜の改良を進めることにより,産肉能力や繁殖能力等の生産性の向上を図るととも に,水田や耕作放棄地等未利用地の活用や耕種農家と畜産農家の連携を進めることで, 飼料生産基盤を強化して輸入飼料に依存しない安定した畜産経営の確立を目指します。

(2)畜産物の流通促進及び畜産経営の体質強化
  本県の銘柄畜産物である常陸牛,ローズポーク,いばらき地鶏の一層のブランド力向 上を進め,それらを牽引役とした販路拡大を図るとともに,畜産経営安定対策を推進す るほか,畜産農家の経営意欲の向上を図ります。

(3)家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産
  家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)の一部が改正され,平成23年10月から完 全施行されたことから,新たな飼養衛生管理基準に基づく衛生指導の徹底により,家畜 伝染病の発生やまん延防止を図り,口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなどの家畜伝染 病の万一の発生に備えた危機管理体制を充実を図ります。また,オーエスキー病の清浄 化対策のほか,動物用医薬品の適正使用を推進し,24カ月齢以上の死亡牛全頭の牛海綿 状脳症検査を継続することにより,食に対する安全・安心を確保します。

(4)畜産環境対策の充実
  県民の環境に対する関心が高まり,より一層の環境に配慮した畜産経営が求められて いることから,引き続き環境負荷を削減するための施設整備やたい肥の適正な利活用 を推進するほか,家畜排せつ物のたい肥化以外の新たな処理・利用方法について検討しま す。

(5)試験研究の推進と指導体制の充実
  未利用資源の有効活用法など家畜の飼養管理,受精卵移植等の繁殖技術や新品種の育 成等に係る試験・研究を推進するともに,畜産情報の収集・提供及び技術普及に取り組 み,畜産農家の経営及び生産技術の高度化を図ります。特に,畜産物の差別化を図るた め,牛肉や豚肉のおいしさに関する研究を進めるなど高度な生産技術の開発に取り組み ます。