国民一人当たりの米の年間消費量は、ピーク時(昭和37年:118.3s)の約半分(平成19年:61.4s)になっており、米の生産調整が行われている一方、飼料穀物の国際相場の高騰等による配合飼料価格の上昇が続き、飼料自給率の向上が重要な課題となっています。
 そこで、米を配合飼料用の原料として用いる飼料用米の取り組みが注目されているなか、当所では、飼料用米の豚への経済的かつ効率的な給与技術と生産性及び市場性の実証試験を実施しています。

飼料用米給与試験
 試験では、ローズポーク用飼料(大麦15%配合)と茨城試験R(大麦15%+飼料用米10%配合(飼料用米はトウモロコシに代替))を給与して比較しました。
 飼料用米給与期間は15週齢時〜110到達までの約2カ月間です。
 その結果、飼料用米を配合した試験区でも生産性(発育、飼料要求率、肉質等)において、対照区のローズポーク用飼料と同様の生産性を示し、さらに市場性(上物率)でも、差がありませんでした。
 そこで、試験豚のロース肉とバラ肉について、ポピュラーな調理方法であり肉料理の代表ともいえる「焼き肉」(表1)による食味試験を行いました。
 パネラーはさまざまな年代の男女95名(内有効回答数93)にお願いしました。

表1 肉の調理方法

食味試験結果(総合判定結果)
 どちらの肉も美味しかったというのが大多数の意見であり、普通が2点であるのに対し、ローズポーク用飼料を給与した肉が3.0、飼料用米を給与した肉が3.1となり、ともにおいしかったものの、飼料用米を給与した方がよりおいしいという傾向がみられました。
 これは豚肉の香り(表2)という項目で、飼料用米を食べた豚肉の方が良いという傾向がみられたことによると思われます。
表2 官能検査項目及び判定基準

(年代別の結果について)
 おいしさの判定について、年代別に集計してみたところ、20歳代、30歳代は、飼料用米を給与した肉よりもローズポーク用飼料を給与した肉の方がおいしいという傾向がみられ、40歳代、50歳代、60歳代では飼料用米を給与した肉の方がおいしい(表3)という傾向がみられました。
表3 年齢別総合判定結果
 以上の結果から、今回、20歳代、30歳代では、やわらかさ、多汁性、肉のうまみ、脂甘み等から飼料用米を食べた豚肉よりもローズポークの方がおいしいという傾向がみられたものの、40歳代、50歳代、60歳代では、やわらかさ等で飼料用米を食べた豚肉がおいしいと感じ、全体的には飼料用米を食べた豚肉は香りが良くおいしいという傾向が認められました。

おわりに
 飼料用米を食べて育った豚肉は、おいしさに定 評のあるローズポークと比較してもそん色が無かったことで、今後も飼料用米を使った銘柄豚肉を視野に入れての実用化試験を続けていく予定です。