8月15日に1971年以来36年振りにJRA美浦・栗東両トレーニングセンターにおいて馬インフルエンザの発生がありました。
 馬インフルエンザは,発熱を伴う急性の呼吸器疾患で届出伝染病であることから,感染畜は家畜保健衛生所への届出が行われ,発生牧場等には隔離,移動の自粛,消毒等をお願いしています。
 馬インフルエンザは,人や鳥のインフルエンザとは異なるウイルスなので,馬から馬へは感染しますが,人や鳥などの他の動物には感染しません。また,人のインフルエンザと異なりあまり季節に関係なく夏でも発生が報告されています。さらに,伝播速度が著しく速いため,集団生活している競走馬などではまたたく間に感染が広がる疾病です。

●病原体
 馬インフルエンザウイルスには,ウマ1型(H7N7)とウマ2型(H3N8)の亜型があり,ウマ2型ウイルスはウマ1型ウイルスより馬に対する病原性が強い傾向にあります。

●感染様式
 基本的に人間と同じように「咳」によって空気中に飛散したウイルスを吸引することで空気感染します。

●疫学
 ウマ1型ウイルス(H7N7)は,1956年チェコスロバキアのプラハで最初に分離されて以来,世界中で流行がみられましたが,1980年以降は確認されていません。一方,ウマ2型ウイルス(H3N8)は,1963年アメリカのマイアミで競走馬から分離され,現在まで世界各地で流行が引き続き起きています。1989年〜1990年の中国の例を除き,全てウマ2型による流行です。

●発生状況
 国内では,ワクチン未開発であった1971年〜72年に輸入馬が感染源となり,競走馬が発病する大流行がありました。今回,36年振りにウマ2型の発生となりました。海外では欧米,アフリカ,インド他で発生しています。

 
●症状
 39〜41℃の発熱,発咳,多量の水様性鼻汁(図1)排出等。特徴は発症の早期に激しい乾性の努力性の咳を頻発することです。外見上健康となっても,運動負荷によって発咳することがあり,早くから負荷をかけ過ぎると症状が悪化します。


図1:発症馬の多量の水様性鼻汁

●診断法
 ウイルス分離,抗体検査(HI反応,CF反応)

●予防法
 3種混合ワクチン接種。現在は現役の競走馬を中心に徹底したワクチン接種が実施されています。また,発症馬については,二次感染の防止や体力維持のための対症療法が必要です。

●防疫対応
@異常が認められた際の早期通報
A陽性馬の隔離,移動自粛,施設消毒等の徹底
B飼養馬に対する予防接種の励行