1 施肥設計システム「たい肥ナビ!」について
(1)たい肥を使うときは,施肥設計が必要です
家畜ふんたい肥には窒素・リン酸・カリなどの肥料成分が含まれています。これらを活用して土づくりに取り組むときは,たい肥中の肥料成分含量と畜種ごとの肥効率を考慮し,たい肥と化学肥料の適正な施用量を算出して施肥設計する必要があります(図1)。
(2)たい肥の肥料成分は,ゆっくり効きます
たい肥に含まれる肥料成分(特に窒素)は,有機体が多く,微生物の働きにより無機体に分解されてから作物に利用されるため,化学肥料に比べゆっくりと効きます。たい肥利用の難しさの一因です。化学肥料と比較してどの程度効くかを肥効率といい,これを考慮して施肥設計を行います。
(3)「たい肥ナビ!」を活用しましょう
肥効率を考慮し,たい肥からの肥料成分を適正範囲内に調整するための施肥設計はとても複雑です。そこで,畜産センターでは,マイクロソフト社の表計算ソフトExcel2003を使って,たい肥利用のための簡便な施肥設計システム「たい肥ナビ!」を開発しました(図2)。
畜産センターのホームページに掲載していますので,ダウンロードして利用ください。
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/nourin/chikuse/taihinavi.html
図2 施肥設計システム「たい肥ナビ!」の概要
(4)掲載農家を募集しています
現在,「たい肥ナビ!」には県内生産たい肥の平均値を掲載していますが,個々のたい肥の成分値に基づく施肥設計やたい肥の流通を促進するため,畜産農家のたい肥生産情報を掲載することになりました。
掲載農家の募集を開始しましたので,掲載を希望される方は,農業改良普及センターにお申し込み下さい。
なお,掲載は肥料取締法に基づく届出を行った畜産農家に限ります。
(5)利用上の留意点
たい肥の肥効率は,土壌の状態・気象条件等によって変わります。「たい肥ナビ!」の試算結果は参考値として活用し,作物の生育状況を確認しながら追肥量を調整する必要があります。
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2施肥設計後のたい肥施用量と化学肥料追加量
(1)たい肥を利用しやすい作物・しにくい作物
県内の主要作物の施肥型を大きく分けると,@基肥重視型作物,A追肥重視型作物,B少肥多面積型作物になります。
乳用牛ふんたい肥(県内平均値)を用い,「たい肥ナビ!」を使って主要作物の10aあたりのたい肥施用量を試算すると図3のようになります。右上になるほどたい肥施用量が多く,窒素代替率が高くなるため,たい肥利用が有利になります。
窒素代替率とは,たい肥中の有効窒素によって化学肥料を削減した割合です。
図3 施肥設計後の乳用牛ふんたい肥の施用量と窒素代替率
1)利用しやすい作物
ネギ・ハクサイなどの基肥重視型作物は,たい肥施用量が多く,窒素代替率も高いため,利用しやすい作物です。
小麦・大豆・サツマイモなどの小肥多面積型作物は,10aあたりの施用量は少ないのですが,窒素代替率が高く県内での作付け面積が多いため,たい肥利用が促進されると,地域における化学肥料低減効果が大きくなります。
2)利用しにくい作物
ダイコン・ニンジンなどの追肥重視型作物は,基肥窒素量により窒素代替率が抑えられ,たい肥施用量が著しく制限されます。
(2)ハクサイにおける施肥設計例(参考)
茨城県野菜栽培基準におけるハクサイ(秋まき中晩生)の施肥量は表1のとおりです。乳用牛ふんたい肥・豚ぷんたい肥・採卵鶏ふんたい肥(各県内平均値)の施肥設計結果は図4になります。施肥設計を行うと,減肥だけでなく化学肥料代の削減にもなります。
個々のたい肥の肥料成分(窒素・リン酸・カリ)のバランスと,作物の施肥量によってたい肥の施用量と化学肥料追加量が変わります。実際に施用するときには,たい肥に表示された成分値を確認し,施肥設計して下さい。
図4 ハクサイにおけるたい肥施用量と化学堆肥追加量
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