今年度の定期人事異動により、畜産課長を命じられました。本県畜産振興に尽くしてまいりますので、よろしくお願いします。
 近年における畜産を取り巻く状況は、WTO(世界貿易機関)農業交渉や日豪EPA(経済連携協定)交渉が進められ、国際化が進展するとともに国際規律が強化され、生産、加工、流通を通じた国際競争力の強化が求められています。また、担い手の減少や高齢化等により家畜の飼養頭数や生産量は伸び悩み、国際競争に耐え得る生産構造が求められる一方で、鳥インフルエンザの発生やBSE(牛海綿状脳症)問題等を契機として、食の安全・安心に対する県民の関心は高まり、畜産に関わる環境問題への対応などとあわせて、消費者に安心して買ってもらえる畜産物の生産や持続可能な畜産経営を確立するためには、消費者と生産者の信頼関係の確保が急務となってきています。
 農林水産省は、平成17年3月に新たな食料・農業・農村基本計画を策定し、消費者の視点に立った政策推進を基本に、農業者を一律に支援するこれまでの政策を見直し、やる気と能力のある経営を後押しすることにより、構造改革を進めていくことや、創意工夫に満ちた「攻め」の取り組みを積極的に支援していくことなどを打ち出し、同年3月には「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」を、さらに同年10月には「経営所得安定対策等大綱」を省議決定しています。
 このような状況の中で、本県では、昨年3月に「茨城県総合計画」並びに「茨城県農業・農村振興計画」を策定し、競争力あふれる産業大県「活力あるいばらき」の実現、特に農業部門では全国をリードする元気で力強い“いばらき農業”の創造をテーマに掲げ、「生産者と消費者のベストパートナーシップ構築プロジェクト」や「園芸産地・畜産振興プロジェクト」など5つのプロジェクトと、「環境にやさしい農業推進運動」や「うまいもんどころ食彩運動」などの3つの県民運動を展開しているところでございます。
 畜産関係につきましては、販売指定店が昨年度300店舗を超えた「常陸牛」のさらなるブランド力の向上と生産基盤の確立を図るため、「常陸牛ブランド確立推進事業」を新たに立ち上げ、さらなる販売指定店の拡大対策や各種メディアを活用した情報発信、消費者交流会、常陸牛のおいしさに関する情報のデータ収集等の実施、繁殖和牛の導入支援や常陸牛素牛の増頭支援を展開し、常陸牛のブランド力や生産力を向上させてまいります。  
 また、昨年3月に策定した「茨城県酪農肉用牛近代化計画」に基づき、自給飼料基盤に立脚した力強い酪農及び肉用牛生産の振興を図るため、その主要な施策として「畜産基盤再編総合整備事業」を推進し、草地等の造成や未利用地の集積等を通じて飼料生産基盤を強化してまいりますほか、「放牧等による遊休農地再活用促進事業」を実施し、遊休農地において和牛繁殖牛などを放牧し、常陸牛のもととなる肉用子牛の生産拡大を図るととともに、遊休農地の有効利用による飼料自給率の向上や農村環境保全による農村の魅力を発信してまいります。さらに、「耕畜連携等自給飼料確保緊急対策事業」などを推進し、耕種農家と連携した飼料作物の生産等の取組を支援するとともに、稲発酵粗飼料の生産拡大を推進してまいります。
 さらに、消費者に安心して買ってもらえる安全・安心な畜産物を生産するために、本県が独自に策定した「畜産物生産ガイドライン」を遵守した飼養衛生管理基準の徹底を図るほか、24ヶ月齢以上の死亡牛全頭を対象にしたBSE検査の実施、常陸牛の生産情報公開システム(トレーサビリティシステム)の活用推進など、衛生管理指導と積極的な生産流通情報の提供に努めてまいります。
 特に鳥インフルエンザ対策につきましては、生産者から定期的に死亡羽数等の報告を求め異常鶏の早期発見に努めるほか、モニタリング検査及びサーベイランス検査の強化、野鳥のウイルス保有状況調査、万一の発生に備えた防疫演習の実習など、本県独自に監視体制や防疫体制の強化・充実を図り、茨城県産の鶏卵、鶏肉の安全・安心を確保してまいります。
 畜産に関する環境問題への対応につきましては、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の本格施行を受け、家畜排せつ物の適正な管理とともに、たい肥化及び農地・草地への還元を基本とした利活用の促進を図るため、「資源循環型畜産確立事業」や「霞ヶ浦等畜産負荷低減推進事業」、「地域循環型液状コンポスト利用促進事業」などを実施し、たい肥の成分分析の徹底、特殊肥料生産等の届出を進めて流通の広域化に努めるとともに、たい肥化施設・機械の整備に対する支援、液状コンポスト技術の活用などを推進してまいります。
 試験研究の推進といたしまして、畜産センター養鶏研究室(茨城町小幡)を、畜産センター本所(石岡市根小屋)への移転整備を進め、本県養鶏業の活性化と安全・安心な鶏卵・鶏肉の生産のための研究を推進してまいります。
 これらの主要な施策に加えて、平成19年度は次のとおり「生産基盤の増強」、「畜産経営の体質強化」、「家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産」、「畜産環境問題の充実」、「試験研究の推進と指導体制の充実」の5本を柱とする種々の施策を効率的、効果的に執行し、本県畜産の振興を図ってまいりますので、本年度も引き続き皆様のご理解、ご協力を何とぞよろしくお願い申し上げます。