茨城県には全国に誇れる高品質和牛「常陸牛」があり、行政・団体・生産者が協力し銘柄確立に向けた取り組みを行っているところです。
茨城県内の和牛肥育農家は肥育技術レベルの高い優秀な農家が多いと言われておりますが、素牛導入が難しいという共通の悩みを抱えております。一般的な素牛導入は、生後9〜10ヶ月齢の子牛を家畜市場でセリにより購入します。茨城県内では大宮と大子の2ヶ所に子牛市場があり、1〜2ヶ月毎に開催されておりますが、県内市場で上場される頭数は年間2,601頭(大宮1,606頭、大子995頭)と上場頭数が少ないのが実情です。そのため、大規模な肥育農家は県外の市場(北海道・鹿児島県・宮崎県・栃木県等)から素牛を導入しており、このような動きは全国的に同じと言えます。
現在の素牛価格は全国的な素牛不足の影響から昨年以降高値取引が続いており、去勢子牛の平均価格も55万円と異常な状況になっております。また、牛枝肉価格はアメリカからの牛肉輸入禁止の影響から下位等級を中心に高値取引が続いております。そのため、現在では素牛導入価格と枝肉販売価格で採算がとれておりますが、誰もが予測しているように何れの時期からか輸入解禁となるはずです。米国産牛の輸入解禁となれば、ホルスタイン→交雑種→和牛(下位等級)の順に値崩れが起きると予想されます。現在の導入素牛は20〜22
ヶ月後(約2年後)に出荷される予定であり、今の素牛価格で販売時に採算が合うかということは、肥育農家なら誰しも疑問視しているところであります。
安心・安全という消費者の願いからすれば、今のような子牛価格の高騰時にこそ全国的に和牛素牛を増頭し、将来的に和牛で食卓をまかなえる位の基盤を作ることが理想なのかもしれません。しかし、このような子牛価格の高い時期でも牛が増えないということは、後継者不足や規模拡大が難しいこと等繁殖農家の課題が多いことの表れです。
本会会員である大子町畜産農業協同組合では昨年7月から「大子町和牛繁殖経営活性化協議会」を設置し、取り組みが始まっております。この協議会は本会と大子畜協・生産者を中心に、大子町・県北
|
畜産振興課・大宮農業改良普及センターが参画して和牛子牛生産の増頭による繁殖経営の活性化を目的に活動しております。これまでに、研修会や先進地視察等を行い、成果として今年6月からは新たに20ヶ所で放牧管理が始まりました。
また、筑紫畜産農業協同組合においても7月から「和牛一貫経営活性化協議会」が設置され、活動が始まりました。この協議会は肥育経営に繁殖雌牛を導入し、経営内一部一貫経営のスタイルを取り入れることによって素畜費の低減を図るとともに、今後の肉用牛生産基盤の安定を目指すことを目的とした協議会であります。筑紫畜協及び管内生産者に、本会・県西総合事務所・農業改良普及センター・肉用牛研究所が構成員として加わりました。今後は研修会や県内外の視察等を行いながら和牛一貫経営の取り組みを進めてまいります。

肥育農家が繁殖農家の仕事を行なうということは、未知の分野への新たなチャレンジであります。
殖雌牛の飼養管理から子牛の出生・管理という仕事は大規模な和牛肥育の仕事からすれば、かなり繊細な仕事といえるかもしれません。ゼロからのスタートで、経営の軌道に乗せるためにはかなりの問題をクリアしなければなりませんが、本会でも協議会の一員として全面的にバックアップしてまいります。
茨城県産銘柄牛としての将来像を考えた場合、「茨城県で生まれ茨城県で育てた美味しい和牛こそが常陸牛」と言えることが理想であると思いま
す。耕作放棄地の有効活用等、全国的にも繁殖牛増頭が課題となっておりますが、茨城県が繁殖牛増頭の先進地となれるよう力を注いでいきたいと考えております。
|