はじめに 常陸牛月例研究会は、茨城県中央食肉公社において4月と11、12月を除く毎月、常陸牛の品質の向上と常陸牛のブランド名アップのため開催されています。当研究所では、平成15年度から16年度に行われた研究会第35回から46回の計12回の成績を入手し、取りまとめましたので報告します。 研究会の成績であることから、データーに偏りがあるため一般的な結論としてとらえることはできませんが、大まかな傾向をつかむことは可能であると考えられます。 出品牛 12回の研究会の出品牛総数は492頭、去勢385頭、雌107頭でした。肥育素牛生産県は14道県で、本県産が148頭、次いで栃木県の108頭、北海道の80頭でした。更に、福島県54頭、宮崎県42頭、岩手県30頭と続き、この6県で全体の94%を占めました。 出品牛の父牛は64頭に上り、出品頭数の多い順から去勢では「北国7の8」の79頭、「福栄」の51頭、「平茂勝」の43頭、「明光4」の37頭、「安平」の21頭と続きます。この他10頭以上を数えたのは、「北仁」、「福桜」、「福谷福」、「美津福」、「安福57」などです。雌では「福栄」の22頭、「明光4」の19頭が群を抜いており、3番手は「安福57」の5頭、「第5隼福kgの4頭と少なくなり、そのほか「北国7の8」など7頭が3頭の出品でした。 出品牛の枝肉重量 出品牛の枝肉重量は、去勢で364〜588kg 平均470kg、雌で267〜501kg平均408kgでした。茨城県から平成15年1月〜12月の間に出荷された黒毛和種の平均枝肉重量(日本格付協会取りまとめ)と比較すると、去勢で10kg、雌で45kg程大きい数値でした。研究会ということで、出荷体重については小さいものは足切りが行われたことが伺われます。特に雌牛では、顕著でした。県別に見ると、岩手県、宮崎県が小さい傾向にあり、去勢で20〜1kg程度平均より枝肉が小格でした。 表1 県別枝肉重量
去勢の部で出品牛が10頭以上を数えた種雄牛は10頭いました。枝肉重量が一番大きかったのは、枝肉が大きいとの評判どおり「平茂勝」でした。次いで、「明光4」、「福桜」、「北国7の8」順でした。「平茂勝」は2番手の「明光4」より15kg余り大きく495kg、「明光4」は479kgで「福桜」、「北国7の8」も470kg台でした。最も小さかったのは「安平」で449kg、その次が「福谷福」の453kgでした。両牛の「明光4」との差は、実に30kg及び26kgでした。研究会の特殊なデーターですが、一般的にいわれているように、兵庫の血の濃い種雄牛の子の枝肉が小さい傾向にあると言えます。 雌の部では、出品牛が10頭以上であったのは、「明光4」と「福栄」の2頭だけでした。「明光4」が419kg、「福栄」が416kgでした。 表2 種雄牛別枝肉重量
出品牛のBMSkyび枝肉単価 去勢の部で種雄牛別のBMSbフ平均が一番高かったのは、枝肉重量が最も小さかった「安平」の7.0でした。次いで、「福栄」の6.7、「北国7の8」の6.5となりました。低かったのは、「安福57」の4.4「福桜」の4.9、「福谷福」の5.3と続きました。「平茂勝」は、6.0、「明光4」は5.7でした。雌では、「福栄」の5.5に対して「明光4」は5.1でした。 枝肉単価は、BMSbニ同様安平がトップで2,027円でした。2,000円台であったのは「安平」だけでした。一番低かったのは「安福57」の1,741円でしたが、この他に「福谷福」が1,700円台でした。 表3種雄牛別BMSbニ枝肉単価
産子の肥育成績は、父牛だけでなく母牛の影響を当然受けます。そこで、他県では供用されることのない本県有種雄牛が母牛の父になっている成績を除いたものが、表4です。 表4 種雄牛別BMSbニ枝肉単価(母の父が、本県有種雄牛以外の成績)
具体的には「明光4」の成績から、「第4光吉」や「谷福6」、「英美」などの産子を母とする8頭分を削除しました。そのほかの種雄牛も同様に削除しています。去勢牛では「明光4」以外で、「安福57」の9頭が主なものでした。これを見ますと、BMSbナは「明光4」も6.1となり、「平茂勝」や「北仁」と同等の数値になっています。 |
種雄牛別の販売価格 去勢の部の販売価格が最も高値であったのは、「平茂勝」の産子でした。平均で955千円でした。枝肉重量が取れて、枝肉単価も高くこの結果となりました。次いで、940千円で「北国7の8」、933千円で「福栄」となりました。「明光4」は、884千円と「平茂勝」と72千円の差となりました。販売価格が低値であったのは「安福57」や「福谷福」でした。枝肉重量、BMSbニもにもう一つであったために、800千円そこそこの価格になりました。雌牛では「福栄」の766千円に対して、「明光4」は714千円でした。 表5 種雄牛別販売価格
表6には、母の父が本県有種雄牛以外のものの販売価格成績を載せました。「明光4」は枝肉単価が50円強上昇し、販売価格も907千円となり、トップの「平茂勝」との差が縮まり、48千円の差になりました。古い本県有種雄牛の産子の繁殖牛は、年齢的にもかなりの年であるであろうし、改良も進んでいないことから更新が必要であると思われます。販売価格が最低値であった「安福57」も枝肉単価が上昇し、「福谷福」を越えて「福桜」並の863千円になりました。「明光4」と他の種雄牛との差もかなり縮まっています。「福栄」と27千円、「美津福」とは7千円、「北仁」とは、逆に「明光4」が5千円ほど大きくなりました。 表6 種雄牛別販売価格(母の父が本県有種雄牛以外の成績)
まとめ 第35回から46回の常陸牛月例研究会の成績をとりまとめましたので、肥育経営の参考にしてください。 本県の子牛市場における肥育素牛価格は、大宮地域農業改良普及センターでとりまとめた「平成15年の年間の全農茨城県本部家畜市場子牛セリ市の結果」によれば、「平茂勝」の去勢子牛の平均価格は537千円で、「明光4」は、385千円で、152千円の差がありました。しかし、表6の枝肉販売価格では、48千円の差しかありません。肥育経営は、売上げとコストの差が収益です。スタートで100千円のハンディを背負って経営するのは大変なことと考えます。「北国7の8」や「福栄」、「美津福」についても同じことが言えます。「福谷福」や「北仁」については、売り上げが明光と同等あるいは低いのにも拘わらず、子牛価格は30千円以上も高い結果でした。「明光4」は、飼いやすいとの評判があります。飼いやすく、経営にとっても有利な「明光4」をもっと利用してみてはいかがでしょうか。 なお、肉用牛研究所では、去年、今年と「北国栄」、「茨北安」といった優秀な種雄牛を生み出しました。「北国栄」の脂肪交雑等級4以上が8割という結果は、検定牛の母牛の能力を考慮すれば、産肉能力のかなり高い種雄牛と評価できます。 また、「茨北安」は後代検定のA−5率3割強の成績であり、今回整理した研究会の成績と比較してみても「福栄」や「美津福」と同等ですし、「茨北安」の父である「北国7の8」や「平茂勝」より5%以上高い数値でした。研究会に出品される肥育牛の母と現場後代検定に供試する牛の母とでは、血統的にも能力的にも大きな隔たりがありますが、それをカバーしてなお余りある成績でした。「茨北安」の育種価はまだ計算されていませんが、父である「北国7の8」を越えることも予想されています。2頭とも、必ずや本県の肉用牛経営に貢献できるものと確信しています。 最後に、表7に売り上げ価格と子牛価格の対比した具体的なデータを載せました。データの性質が違いますが、大まかな傾向をくみ取れると考えます。ご検討ください。 表7 種雄牛別販売価格(母の父が、本県有種雄牛以外の成績)と子牛価格
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