1 現在の状況
 現在の肉牛関係の状況については、仕入れが高い(素牛高)わりに販売がそれほど伸びない状況にあるといえます。素牛が高いのは素牛の頭数が全国的に少なくなっているのが主な原因ですが、枝肉の販売価格が伸びない原因は大きく分けて2通りあると思います。一つは子牛の育成の問題があります。子牛の価格が高くなってくると繁殖農家の方は、より高く販売しようとして、多くの餌を食べさせることになります。この餌が粗飼料であれば問題はありませんが、濃厚飼料を多量に給与した場合問題がでてきます。この問題は後日述べるとして今回はもう一つの問題である肥育段階での粗飼料のバラツキによる肉質低下について述べてみたいと思います。
 肥育農家にとっては、収益を上げるのに肉質を良くする工夫を長い期間かけて確立してきた訳ですが、最近は枝肉の仕上がりの甘い牛が多く散見されるようになってきました。特に肉色の濃い枝肉・水っぽい枝肉が多くなっています。この要因についてはさまざまなものがありますが、ここにきてこの原因の多くが粗飼料に問題があることがわかってきました。粗飼料といってもいろいろありますがこの場合の粗飼料というのは稲ワラになります。
 ここ数年は口蹄疫や異物混入の影響で、品質の低下や品不足が顕著で以前のような良質の稲ワラが少なくなってきています。その結果、肥育牛にとって一番重要である繊維分が不足し、その結果肉質低下が起きていると考えられています。その稲ワラの品質低下や品不足を補える粗飼料として、以前紹介したバイオバガスがここにきて非常に注目されてきております。本会の肉用牛振興研修農場においても約2年前より全頭に給与し大きな戦力になっております。ここにもう一度、バイオバガスの特徴を述べておきますので肉質低下や枝肉重量の低下に悩んでいる農家の方は、ぜひ検討してみてはいかがかと思います。

2 バイオバガスとは
 バイオバガスという粗飼料ですが、これはサトウキビの絞りカスです。しかし、以前敷料として出回ったバカスという商品とは根本的に違い、特殊な技術(バイオ処理)によって牛にとって負担がほとんど無く容易に丈夫なルーメン形成ができるという特徴があります。
@製品の概要
 1)主な原料
  主原料:サトウキビの絞り粕(バガス)
  副原料:糖蜜
 2)主な仕様
  色   :薄い茶色〜濃い茶色
  形 状:粉のバガスと粗いバガスが混在
  外 見:プレスによりブロック状に成型
  包 装:PP袋
  入り目:25kg


3 バイオバガスの特徴
@世界一の可消化センイ含有量。
A世界一のVFA酢酸生成量。
BビタミンA(βカロチン)含有量は稲ワラの1/10以下。
C他の粗飼料と比較して圧倒的に活力あるルーメンづくりが可能となる。
D嗜好性が非常によい。
Eルーメンアセドーシス予防に非常に効果がある。
F畜舎の消臭に効果がある。
G粗飼料としての成分・品質等非常に安定しており長期保存が可能。
H動物検疫対象外の品目に指定されている安全性の高い粗飼料である。
IPH値は4.3前後であり、口蹄疫ウイルスが低PHにより不活化してしまうため口蹄疫の心配は皆無である。
J肉用牛の場合、適期に食い込ませることによって最大級の脂肪交雑(サシ)が期待できる。
K内蔵廃棄が少なくなり、疾病関係(鼓脹症・下痢等)が減少する。
L肉のキメ・シマリ肉色の改善等に効果がある。
Mその他

4 給与量の目安

粗飼料の給
与方法
バイオバガス給与量(1日1頭当
たり)
乳 牛 牧草と併用 1.0kg〜3.0kg(推奨2.0kg)
 禾本科牧草と置き換える。
 特に硝酸態窒素の多い牧草と優
先的に置書換える。
 乾乳期に給与する場合は、カリ
ウム含量の高い飼料と置き換える。
肉 牛 稲わら牧草
と併用
0.5kg〜1.0kg
育成牛 牧草と併用 @生後4週令までは10g〜20g
 (馴らし)
A4週令〜2ヶ月令にかけて少し
ずつ増給
B2ヶ月令〜6ヶ月令は飼料全体
の25%(上限1.0kg)
C6ヶ月令以降1.0kg
 注意事項
@バイオバガスは慣れると牛が好んで食べるようになりますが、最初は食べない牛もいます。このような場合は、肉牛では7日〜10日、分離給餌の乳牛では2週間〜3週間かけてゆっくり馴らしてください。
A飽食にするとバイオバガスを食べ過ぎ、濃厚飼料の食下量が減る場合かあります。給与のタイミングや給与方法を変えてみて下さい。
Bバイオバガスは高繊維・低タンパク飼料です。牛の状態を見て、飼料全体のカロリー・タンパクを強めていくことは良いことです。
C肥育牛の粗飼料をバイオバガスのみにすることも可能です。

5 最後に
 バイオバガスは以上のような特徴を持った画期的な機能性粗飼料です。特に肉牛肥育農家にとっては、我国における口蹄疫発生以降、安全で良質な稲ワラの確保が非常に重要な問題となってきました。なぜなら良質の稲ワラの代用となる粗飼料が最近までは無かったからです。
 しかしバイオバガスの登場により現在の飼養体系も大きく変わる可能性が出てきました。農家サイドから見れば、自分の飼養管理にあった給与方法を考えていけば良いのです。そして優良な配合飼料と組み合わせて使用することにより、素牛の能力を最大限発揮させることが可能となります。
 バイオバガスは丈夫で活力あるルーメンをつくることから、酪農関係についても効果的に使用することにより、産乳量のアップや、乳脂率の向上が期待でき、疾病の発生も大幅に減少させることが可能となります。
                                      以上

(参考資料)

1 成分分析例
成 分 名 含 量 成 分 名 含 量
水分 8.0% カルシウム 0.24%
粗タンパク 1.8% リン 0.04%
ADF 72.3% マグネシウム 0.05%
NDF 86.0% カリウム 0.20%
NSC 9.2% 479ppm
TDN 52.0% 硝酸塩 0.01%以下
(分析値:DHI-A平均 単位:乾物当たり)

2 繊維成分の比較
飼 料 名 NDF ADF NDF-ADF
バイオバガス 86.0 72.3 13.7
稲わら※ 63.1 39.2 23.9
チモシー※ 68.1 42.7 25.4
※日本標準飼料成分表より抜粋、値は乾物当たり

3 ビタミンA含量
バイオ科学社 分析値
飼 料 名 カロチン
(mg/100g)
ビタミン
(iu/kg)
バイオバガス 0.02 80
輸入稲わら 0.14 560
ライグラスストロー 0.03 120
アルファルファー 0.90 3,600