わが国の乳牛の大部分を占めるホルスタイン種はヨーロツパを原産地とし、冷涼な地域で育種改良されたもので、寒さには比較的強い反面、暑さには弱いという特徴があります。さらに乳牛は他の家畜に比べて暑さに対応しにくい理由があります。
 それは大量の乳生産のために飼料を多く摂取し、大量の熱を体内で発生すること、および熱の放出が不得手なことです。暑さの影響は直接的には体温の上昇、間接的には採食量、乳量・乳質の低下あるいは繁殖機能の低下などとして表れ、近年は高泌乳化のため影響が大きくなっています。これらを軽減するため、換気扇、細霧発生装置、これらの組み合わせなどさまざまな対応が採られています。
 真壁郡協和町において、園芸用ノズルや既存の中古農機具等を活用し、極めて低コストで細霧発生装置を設置し、効果をあげている酪農家・鈴木勝一さんの取り組みを紹介します。
 水耕栽培用ノズルを活用
 それまで換気扇による送風で夏場の暑熱対策を行ってきた鈴木さんですが、夏場の乳量の落ち込みに悩まされてきました。平成12年冬、隣町の水耕栽培のホウレンソウを作っている知人から、余っている水耕栽培用ノズルを分けてもらったことが取り組みのきっかけでした。設計図やマニュアルがあるわけでもなく、市販のシステムを導入している近隣の事例を見学したりして、試行錯誤を繰り返しました。
 地下水を濾過装置(ノズルの目詰まり防止)を経て中古の300gポリタンクにくみ上げ、これに 園芸用動噴をセットします(写真1)。
 さらに近所の電気屋さんに頼んでオリジナルの制御盤を整備して、25℃以上になると噴霧が始まり数分ごとに稼働するようセッティングしました。当初はパイプラインの高さに据付けたところ牛が濡れてしまい失敗。40頭規模の吹き抜け牛舎で天井が高いのを活かして、できる限り高い位置に付けたところ(写真2、写真3)概ね良い感触が得られました。
 稼働して3シーズンを経過した現在ですが、牛舎に湿度計を設置し、湿度30%以下の時は換気扇は回さず70%以上の時は短時間で噴霧を終わらせる、など稼動基準もできつつあります。これから手作りに挑戦する人へ鈴木さんは、ノズルの数は約半分、ポリタンクの容量も50gで十分効果があるとアドバイスしてくれました。
 大きな投資効果
 設置の総費用は概ね22万円(表1)。飼養規模は経産牛40頭で装置導入以前も以後も変わりませんが、出荷乳量は平成11年までが32万kg、導入以降が34万kgへと約2万kgも増加しました。動力の経費を差し引いても非常に大きな投資効果があるといえます。

(表-1) 設置費内訳
資 材 金 額 備 考
動力噴霧器
ノズル
制御盤
配管
濾過器
ポリタンク
100,000
60,000
50,000
10,000



新古品


中古品
総 計 220,000

写真1 写真2 (2頭に1ノズル)
写真3