稲発酵粗飼料は13年度から本格的な推進が全国展開され、12年度502ha、13年度2,378ha、14年度3,307ha(見込み)と着実に拡大しています。 当県でも12年度0.3ha(1町)、13年度64ha(3市3町)、14年度77ha(5市5町1村)で取り組むまでに至っています。(農業総合センター調べ) その取り組み形態も表1のとおり、栽培から収穫・調製、給与までを@耕種農家と畜産農家が連携する場合や、A耕畜間にコントラクターが存在する場合、B作業全てを畜産農家が行う自己完結型等に分類できます。 また、収穫機械がないため収穫・調製を専用収穫機メーカーに依頼する場合もあります。 10月には県内各地で収穫実演会が開催され、稲発酵粗飼料専用品種や専用収穫機、ロールベール作業をご覧になった方も多いと思います。 今年は「クサホナミ」、「ホシアオバ」、「はまさり」等専用品種が作付けされています。原物収量は、直はで2,781kg/10a、移植で3,538kg/10aとなっています。(最終確定値ではありません) 本誌11月号で13年産の給与結果について述べられていますので、ここでは現地事例を紹介しながら、稲発酵粗飼料栽培・収穫・調製・給与の取り組みが継続できる要件について考えてみたいと思います。 ![]() |
【事例1:大洗町】 取り組み2年目で県内最大の作付け面積があり、町所有の専用収穫機1台で対応しています。 栽培管理、収穫・調製は稲作農家(担い手組合14戸)が、運搬・給与は茨城町の畜産農家(酪農11戸、肥育牛1戸)が担当しています。 前年度、刈り取り時期が早かったり、ロールをほ場へ放置したため水に浸ったりした失敗を踏まえ、今年は作業に入る前に何回となく話し合いの場が持たれました。その結果、「栽培利用協定」にもとづき、より良い物を作っていこうという合意に至りました。 実際には、今年は畜産農家側も収穫作業に参加し、その場で搬出・運搬することになりました。 それ以外にも、ロールに調整日を記入したり、ロールの取り扱いや運搬、保管にも気を配るよう心がけるようにしました。また、今年はただラップを巻くだけでなく、その巻き数やラップ資材、添加剤についても検討が行われています。 取引価格はほ場毎に収量(ロール数)を確認(これが大変な作業となります)し、原物1kg当たり10円と決めています。大洗町には魚屋さんが使う台秤があり、実際に軽トラに乗せて秤量しています。 耕種農家側にとって良く作れば作ったなりの収量に応じた、収入に見返りのある決め方にすることで、生産意欲の減退を防いでいます。 【事例2:水戸市】 栽培から収穫・調製、畜産農家の庭先までの運搬までを耕種農家(担い手組合3組合)が担っています。収穫・調製は水戸市農業公社所有の専用収穫機2台でおこないますが、補助員として酪農家が立ち会います。 給与は市内外の15戸の酪農家が予定されています。 料金体系は10a当たり30,000円を酪農家と耕種農家がそれぞれ拠出し、公社の機械レンタル料金やオペレーター料金、栽培に係わる費用等をそこから支出します。 なお水戸地域農業改良普及センターによるサイレージ品質追跡調査では、13年度に調製し越夏したロールベールでもpH4.3、水分64%、Vスコア(品質の評価法の一つで100点満点)79.5点で、現物を見た酪農家も満足していますので、保存条件により長期保存も十分可能と考えられます。 |
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【事例2:東町】 栽培は稲作農家とコントラクターの二者があり、収穫・調製はコントラクターが既存の牧草収穫体系機械で対応しています。 ここでは農協が間に入り、町外の肥育農家と契約がなされています。 稲発酵粗飼料料金と運賃(運送業者が搬送)を肥育農家が支払い、秤量も受け取る肥育農家が行います。 相対ではなかなか進まない取り組みも、間に仲介者が入ることで広域流通システムが出来上がり、輸入飼料のように容易に入手することが出来ます。 以上の事例1,2,3のように、耕種農家と畜産農家が存在する場合、第1に稲発酵粗飼料が商品としての価値がないと(販売を前提とすれば)売買契約が成立しません。給与する畜産農家の評価が高いものであれば、「また来年も頼もう」ということになりますので、収穫・調製する側はサイレージ品質や作業安全等に関する知識が要求されてきます。 第2に、オペレーターの育成と併せて、収穫・調製作業の専任者を決めて責任を持ってもらうことが望まれます。 第3に、作業や費用の分担等の決め事を綿密に調整する必要があります。特に作業では、ラップしたロールをほ場から持ち出し、トラックに載せ、搬送し保管場所へおろすまで誰が担当するのか決めなければなりません。 また、水田に堆肥を還元出来るようになれば地域内での有機的な循環にもつながり、両者にとってもメリットが出てきます。 【事例3:協和町】 栽培から収穫・調製、給与まで2戸の酪農家が行う自己完結型です。既存の牧草収穫体系機械があり、既に二条大麦でも共同作業していたため2戸が取り組みやすい素地はありました。 今年始めて直はにより取り組みましたが、一部鳥害にあい、今後の課題として残りました。 収穫・調製作業は複数で取り組む方が能率が上がり、天候の急変にも対応が可能です。 自己完結型では、全ての責任を畜産農家が負うものの、耕畜間の売買契約や金銭面での煩雑なやりとりが無いことで取り組みやすい面があります。 また、仲介者の必要もありません。 【事例4:里美村】 繁殖和牛農家3戸がそれぞれ個別に取り組む自己完結型です。 中山間地域の転作として、水田機能を維持しながら取り組んでいますが、個別の転作ですので団地化が難しい面があります。 収穫・調製は地元農協所有の小型のロールベーラーとラッピングマシーンで対応しましたが、その作業性に課題が残りました。 しかし、ロールの大きさは飼養規模に見合ったものとなっています。 |
【事例5:水海道市】 稲作農家が栽培管理をし、収穫以降の作業は肉用牛農家が稲わら収集に利用している既存の牧草収穫体系機械で対応しています。 ほ場が遊水池のため、台風のたびに冠水に見舞われたりして心配しましたが、無事収穫することができました。 稲作農家側は転作麦並(あるいはそれ以上)の収入になるのであれば、面積拡大の意向がありますし、畜産農家側も引き受ける意欲があるので、今後その契約条件によって面積が増加する可能性があります。 以上の事例3,4,5は、収穫・調製を給与畜産農家が行うため、良い物を作って喰わせようという意欲があります。そのため、刈り取り適期に作業を行い、ロールの取り扱いや保管にも気を配ると思われます。 また、自己所有の水田の場合、完熟堆肥の還元が進み多肥栽培である専用品種の基肥分を化学肥料と置き換えられると考えられます。 このように、県内の取り組み事例は様々ですが、取り組みが継続する要件をとりまとめてみますと、
などが挙げられますが、最終的には人と人のつながりが継続させるポイントともいえます。 |
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表1 平成14年度 県内の取組状況
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