●注意事項
 (1)電気牧柵を設置してはいけない場所
 法面がある場合は、崩壊を防ぐため法面から1m以上離して牧柵を設置(a)するか、もしくは、法面の上縁から1m程度離し、牛が歩ける平らな場所を確保して牧柵を設置(b)します。



 (2)衛生管理
 耕作放棄地は民家や耕作地に近接していることが多いため、ハエ・アブなどの衛生害虫への対策が必要です。放牧前に耳標型殺虫剤(商品名:ヤシマペルタッグ、バイオフライイヤータッグなど)を装着してから放牧しましょう。有効期間は約6ヶ月です。


耳標型殺虫剤と個体識別耳標


●耕作放棄地放牧の開始手順
1.地域での説明会
 耕作放棄地の地主と繁殖和牛の畜主に呼びかけ、耕作放棄地放牧のお互いのメリット・疑問点を説明したうえで参加者を募る(地域での耕畜連携を図る必要がある)
 当面は繁殖和牛農家が放牧地を見回る関係上、繁殖農家を核として地域で取り組まれることが望ましい
2.地域の住民への説明
 牛の鳴き声や、糞尿、脱柵などに不安を持つ住民もいるので、あらかじめ区長等に説明し、回覧を回すなどして地域住民へ理解を求めておく
3.リスト作成
 放牧を希望する地主及び繁殖和牛を飼養する畜主のリスト作成
4.現地調査
 1カ所概ね2反歩程度のまとまり・草種・草量・牛、水の運搬が可能か・日陰の有無・ガラス片の有無・泥濘化しないか・放棄地の周辺環境が放牧に適しているか等について調査する
5.放牧牛の調査
 放牧に適している期間は、離乳後から分娩2ヶ月前までなので、離乳時期と分娩予定日を調査する。また放牧予定牛の健康状態、飼養管理状況についても調査する。
6.耕作放棄地・放牧牛のリスト作成
4・5の調査に基づき放牧予定地及び放牧予定牛牛のリストを作成
7.放牧計画書の作成
 6のリストに基づき耕作放棄地別の放牧可能日数と放牧開始時期を判断し、牛別の放牧可能期間から、耕作放棄地別に放牧牛を割り振り、放牧計画書を作成
8.地主と繁殖和牛の所有者間で、借地契約を締結
 借地の地番・借用期間(月単位)程度を記載した簡易な様式
 (耕作放棄地に牧草を作り放牧草地とする場合は正式な契約を締結する)
9.牛のトレーニング
 自宅のパドックや肉用牛研究所で放牧と電牧柵への馴致を行なう
10.電牧の設置
 電牧線設置場所の下草刈り・水飲み器の設置
11.入牧
 牛・水の運搬
12.放牧地の見回り
 牛の健康状態・電牧周辺の草刈り・水・草の残量
13.退牧(転牧)時期の決定
 草の残量、牛の状態により退牧(転牧)の日時をあらかじめ決定する
14.次の放牧地の電牧設置
 転牧をする場合、次の耕作放棄地の草刈り・電牧の設置