●放牧中の管理
 (1)放牧牛
 @放牧直後は、牛が落ち着くまで観察します。その後2〜3日は行動を30分程度毎日観察します。
 A放牧開始後1週間は採食量、腹の大きさ、反芻、糞の大きさなどを注意して観察します。放牧環境に慣れたことの最初の目安はゆったりと座って反芻することです。1週間しても野草の食べ方を覚えない牛は一度収牧して,体力を回復させてから再度放牧するとよいでしょう。その後、退牧直前までは週に1回程度、草や水の残量、牛のコンディション、蹄の状態等を観察します
 B草の残量が疎らになってきたら、草の残量と牛のコンディションとで転牧時期を決定します。
 C退牧1週間前から、放牧地内に入り毎日エサを手渡しで与えて、徐々に鼻環や頬綱をつかむ訓練をします。牛は草も少なく空腹状態なので、かけ声をかければすぐ近寄ってきます。

 (2)放牧場
 @牛は好きな草または食べなれた草から食べ始め、その草が無くなると一呼吸(2〜3日)おいて、次の草種の草を食べ始めます。最後には食べられる全ての草を食べ尽くしますので、その様子を観察します。
 A電牧線の下の草や、周囲の枯れ草などが電牧線に触れると漏電して電圧が低下しますので、電牧線に沿って見回る必要があります。

 (3)水
 @放牧牛にとって水は欠かせませんので、注意が必要です。
 A気温や雨の量、容器の大きさで補充間隔が異なります。
 B多少濁った水でも問題ありませんが、何回かに1回は放牧場の外側に流し、水槽を洗って新鮮な水に入れ替えると良いでしょう。(濃厚飼料が水に入ることがないので、夏期でも汚れにくい)


●牛の捕獲方法
 牛の観察時には少量の乾草・刈り取った野草・濃厚飼料を与え、牛が寄って来たら手渡しで与えるようにしましょう。観察が楽になるばかりか、牛が手で簡単に捕獲できるようになります。⇒捕獲には移動式連動スタンチョンや追い込み柵も利用できます。


移動式連動スタンチョン 【山口県畜産試験場】


●排泄された糞の影響
 耕作放棄地の放牧で、草だけで生活している牛の糞の臭いは少なく、腐葉土のような匂いがします。放牧後の土壌の硝酸態窒素、アンモニア態窒素、大腸菌などについて調査した結果、特に問題がなかったとの報告があります。