●放牧馴致
 (1)放牧前にすべきこと(気象環境・生草・採食行動への馴致)
 放牧経験のない牛は、舎外に繋ぐか、パドックを設けて放して、外気や雨・風などに慣らします。また約2週間をかけてエサを徐々に山野草に切り替えて、第1胃内微生物を適応させます。できれば生えた状態の山野草を舌で巻き取って食べることも学習させると良いでしょう。

 (2)電気牧柵への馴致
 脱柵を防止するため、牛が電牧線に触れると、ショックを受けることを必ず学習させなければなりません。放牧前にパドックで牛が自然に電牧線に触れるようにして馴致します。牛は電気に対する感受性が高く、感電することを学習した牛は、それ以降電牧線に触れなくなります。(電牧線は通常2段以上張りますが、学習した牛であれば、1段だけでも、脱柵を防げると言われています。)

電牧線へ人間が無理やり触れさせると、牛は人間不信になり捕獲が難しくなること
があるので、牛が自然に電牧線に触れるようにしましょう。


●耕作放棄地の選定など
 (1)繁殖和牛は県内の耕作放棄地に生えている野草や潅木の葉などほとんど飼料として利用します。(牛舎で濃厚飼料や飼料作物を給与された場合は、放牧直後は野草を飼料として認識し、環境の変化に順応するまでは採食せず、しばらく放牧地内を歩き回るのが一般的です。)
 (2)耕作放棄地の選定に当たっては、牛の運搬・積み下ろし・水の補給が可能な場所を選定し、蹄を傷めるようなガラス片等がないことを確かめます。
 (3)放牧経験の浅い牛を放牧する場合は、民家の近くや車の通行量の多い道路沿いは避けましょう。
 (4)水田でもガマノ穂が生えているような湿田は、飼料として利用できる野草もなく、泥濘化しやすいので放牧地としては利用できません。
 (5)林地に耕作放棄地が接していれば、林地の一部を耕作放棄地と一体的に囲うことにより、夏期には日陰のある放牧地とすることができます。


日除けで休む牛【肉用牛研究所】

 (6)セイタカアワダチソウは、花が咲き始める頃に放牧した場合は、葉は採食しますが茎は堅くなり食べ残します。