豚丹毒は古くからよく知られている病気で
す。宿主域が広く,豚やイノシシの他,人を含
むほ乳類や鳥類にも感染します。家畜伝染病
予防法による届出伝染病に指定されていると
ともに,と畜場法では全部廃棄の対象となりま
す。国内では毎年発生があり,平成21年以降
は2,000頭以上で推移しています(下表)。特に,
急性の敗血症が増加しており,一戸あたりの被
害も大きくなっています。最近の研究によると,
平成21年以降に分離された豚丹毒菌の中には,
今までとは異なる遺伝子配列を示すものも確認
されています。このように,豚丹毒は決して過
去の病気ではなく,現在も一度発生すると大き
な経済的損失を与える重要な感染症であること
から,改めて症状や対策について御説明します。
発生状況

* H24年は11月までの集計
原 因:豚丹毒菌
自然界に広く分布する細菌です。一般の消毒
薬で容易に殺菌されますが,自然環境下での抵
抗性が強く糞便中や土壌中では数ヶ月間生存し
ます。特にオガクズ豚舎で発生した場合は,汚
染された敷料が新たな感染源となり集団発生を
繰り返します。
本菌の侵入経路は経口感染が主ですが,創傷
感染でも感染します。また,外見上は健康に見
えても,扁桃や胆嚢,リンパ節,腸管内などに
菌を持っている保菌豚が多く,糞尿などの排泄
物と一緒に周囲に菌をまき散らします。
臨床症状:経過等により以下の4つに分けられます。

対 策
飼養衛生管理基準に準じた管理を心がけると
ともに,適期でのワクチン接種により予防が可
能です。最近の発生数の増加については,ワ
クチン接種率の低下も原因の一つに挙げられま
す。ワクチンを行っていない農場で万一発生し
た場合,感染が拡大することが多く,沈静化に
時間がかかり,経済的な損失も大きくなります。
是非,ワクチン接種の検討をお願いします。
また,最近分離されている遺伝子配列の異な
る豚丹毒菌についても,ワクチンの効果は確認
されています。
<ワクチン>
(1)生ワクチン
子 豚:40〜60日齢に1回皮下接種
繁殖豚:6ヶ月間隔で皮下接種
・移行抗体の影響を受けやすい。
農場毎にバラツキはありますが,子豚の移
行抗体の消失には最低3.5〜4.5ヶ月程度
かかることが実験的に示されています。
導入豚等の接種漏れに注意し,繁殖豚群の
一定した抗体価を維持しましょう。
・抗菌剤の影響を受けやすい。
ワクチン接種前3日間,接種後2週間は
抗菌剤の使用は避けましょう。
・善感反応により,生ワクチンの効果を確認
しましょう。
「善感反応」とは?
接種後2〜3日頃から接種部位に発赤,丘
疹が発現します。これは1週間前後で消失
します。
(2)不活化ワクチン
4〜5週齢以上に3〜5週間隔で2回筋肉内
接種
・移行抗体や抗菌剤の影響は受けないもの
の,2回接種が必要です。
<飼養管理>
(1)豚舎豚房の定期的な洗浄・消毒の実施(豚丹
毒菌は熱や消毒に弱い)
(2)ストレスの軽減(適正な温度・湿度・飼養密
度,十分な換気等)
(3)オールイン・オールアウト 等
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