1.はじめに
近年,食の多様化などから食用米の消費が減
少し,生産調整が拡大する中で,飼料用米の生
産は食用米生産に替わる水田の有効利用や自給
飼料基盤の拡大という点で注目され,本県でも
飼料用米の生産は拡大しています。一方,畜産
経営における家畜ふん尿の多くはたい肥として
利用されていますが,利用にあたっては,環境
負荷を考慮した耕畜連携が求められています。
今回,豚ふん尿のうち液状物について,液状
コンポストとして飼料用米に追肥した時の肥効
率,粗玄米収量について紹介します。
2.液状コンポストとは?
一般的に,「積極的な混合攪拌によって好気
発酵させ,臭気がなくなり圃場に施用しても作
物の発芽障害などになる有害物質がなくなって
おり,安全な肥料として利用できるように調整さ
れた液状取扱いの家畜糞尿」とされています。
3.栽培試験について
1)供試液状コンポスト
好気発酵させた豚尿由来液状コンポスト
(表1)
2)供試品種:飼料用米(品種 べこあおば)
3)試験方法
茨城県農業総合センター農業研究所内の水口
側に配管をした7.1a(7.4m×96m)の水田圃場
にて試験を実施しました。2011年5月25日に苗
を移植し,追肥(7月8日)は,液状コンポスト
(無機態窒素量として5kg/10a)を水口からか
んがい水と混合しながら施肥しました。
4)試験結果
@液状コンポスト由来窒素利用率及び肥効率
収穫時における飼料用米の液状コンポスト由
来窒素利用率の分布は,圃場中央部分で窒素吸
収量が高く,水口と水尻部分で窒素吸収量が低
く,窒素成分の希釈がみられました。窒素利用
率は約50%,肥効率は約80%でした。(表2)
A粗玄米収量
液状コンポストの追肥利用により粗玄米収量
は高くなり,化学肥料と同様の効果が得られま
した。(表3)
4.まとめ
液状コンポストを追肥利用することで粗玄米
収量が高くなり,化学肥料の追肥と同様の効果
が得られました。また,液状コンポストを水口
から施肥する際は,圃場の高低差等により拡散
しにくい場合もあるので,事前に完全に落水をさ
せるなど圃場毎の対応が必要な場合があります。
液状コンポストを利用する際には,環境負荷
を考慮し,成分量の把握や土壌診断に基づいた
施肥が大切です。環境にやさしい利用を心がけ
ましょう。
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