【はじめに】
 養鶏用飼料中のトウモロコシの配合割合は,5〜6割を占めており,ほぼ100%を海外からの輸入に依存しています。近年トウモロコシの急激な価格高騰と安定的輸入の不透明感から養鶏農家では経営存続に危機感を強めています。
 一方,日本人の主食である米の消費量は年々落ち込み,食用米を生産する水田の作付面積は約160万haに減少し,全国で100万ha程度の生産調整水田が存在しています。
 このような状況のなか,トウモロコシの代替として米を給与することが全国的に注目され,各地で取り組みが始まっています。当研究室においても,奥久慈しゃもと採卵鶏に対する給与試験を行っております。今回は,奥久慈しゃもへの給与試験の内容をご紹介します。
【奥久慈しゃもへの給与試験 (中間報告)】
○試験概要
 試験区:@対照区(通常の奥久慈しゃも専用飼料)
A米10%配合区(専用飼料のうち10%を玄米に置き換えた飼料)
B米20%配合区(専用飼料のうち20%を玄米に置き換えた飼料)
※米の配合は当センターで攪拌機を用いて行った。 米給与期間:35日令から出荷まで (♂90日間,♀117日間)
○試験結果  <発育および肉質> 10%及び20%添加の両区とも対照区と比較して出荷体重に差は見られなかったことから,米給与による発育への悪影響はないと考えられます。
図1 体重の推移
  肉質に関しては,米を給与した場合,雄・雌ともに対照区と比較して柔らかくなる傾向があることが分かりました。また,水分,保水性,肉色について対照区と差はありませんでした。
<食 味>
  奥久慈しゃもを取り扱う鶏料理店にアンケート調査を行ったところ,20%の米を食べさせた鶏の方が対照区と比べて,「まろやか」「柔らかい」「香りがよい」「脂が多い」,との回答がありました。また「20%配合した場合は,やさしい味わいになり“奥久慈しゃも”らしいワイルドな特徴が損なわれる」との意見がありました。
  10%配合の場合,対照区と比較して味・香り等が対照区と同等かそれ以上に優れているという結果でした。10%程度の配合であれば,これまでの奥久慈しゃもの特徴を残しつつ,米独特の香りが出るなど米給与による好影響もみられ,バランスがとれた味わいになるようです。


図1  体重の推移

【最後に】
  近年大いに注目が集まっている飼料用米。特に養鶏においては,「籾のままでの給与が可能」,「粉砕の必要がない」,「高い配合割合が可能」との研究報告があり,飼料用米の利用価値は他の家畜と比べて高いと考えられます。籾での給与であれば,籾すりの手間が不必要なため玄米よりも安価に入手でき,飼料費の低減につながる可能性もあります。
  また採卵鶏の場合,高水準で米を給与すると,卵黄色が薄くなることが知られていますが,消費者へ「国産飼料」という点をうまくアピールすることで高値で販売できる可能性もあるかと考えられます。
  県内でも既に飼料用米の作付け面積は100haを越え,一部の生産者団体で飼料用米への取り組みを始めており,今後もますます広がっていくことが見込まれます。   当研究室でも,引き続き採卵鶏での産卵への影響や,籾の形状での給与など,更なる普及に向けた試験を続けていく予定です。