現在、購入飼料は高値が続いており、畜産経営を取り巻く環境は非常に厳しい状況が続いています。そのような中、自給粗飼料の生産が推進されていますので、県内のトウモロコシサイレージ生産拡大へ向けた新たな取り組みについて紹介します。

トウモロコシサイレージの利点と問題点
 トウモロコシサイレージは濃厚飼料と粗飼料の二つの特性を持っているため,上手に利用すると濃厚飼料の節減につながります。また、平成18年農水省の資料では自給粗飼料TDN1sあたりの生産コストは、都府県54円(物財費ベース38円)であり、輸入乾牧草92円程度に比べて安価でありコスト削減の一つの方法に挙げられます。しかし、サイレージ生産は収穫調製時に重労働であることから高齢化や規模拡大が進む中、県内の生産面積は年々減少傾向にあります。

収穫調製作業の省力化を図るコンビラップマシン
  筑西、結城、坂東地域農業改良普及センターでは収穫調製時の省力化を図る技術として、ハーベスタで刈り取ったトウモロコシをロール梱包からラップ作業まで一台で実施できる複合作業機(タカキタ社製)の現地検討会を8月に合同開催しました(写真)。35から100馬力のトラクタに対応し、1時間あたり30個(直径100×85p、質量約五〇〇s)のロールベール生産が可能です。
 高密度(六〇〇〜七〇〇s/?)に梱包後すぐにフィルムで密閉するため栄養分の貯蔵ロスが少なく(図1)、微生物叢も乳酸菌が増加し不良細菌が減少し、ピンホールができてもカビが広がり難いので保存性も高いという特性があります。また、TMR(完全混合飼料)の長期貯蔵も期待できます。実演会圃場を提供した酪農家からは,従来のバンカーサイロでの調製時間と比べて三分の一の労力が軽減されるため機械の導入を進めたいとの声がありました。価格は約900万円です。

写真1 コンビラップマシンの概要




耕畜連携によるトウモロコシサイレージの生産
 常陸太田地域農業普及センター管内では、ジャガイモの連作障害に悩む露地野菜農家がクリーニングクロップとして栽培した飼料用トウモロコシを鋤き込まずに収穫し、サイレージ化し、乳牛の飼料に供給する仕組みづくりに今年度からチャレンジしています。

今年のトウモロコシは生育期間中に病害虫の発生や倒伏等もなく収量も確保されました。播種は酪農家の既存の機械(コーンプランタ)を利用し、収穫調製作業は今後の流通も見据えて、細断型ロールベール体系(ハーべスタ、牽引式細断型ロールベーラ、自走式ラップマシンの3台)で9月初旬に実施しました(表1)。生産調製されたロールベールは、酪農家で給与され、嗜好性も良好でした。この圃場で利用した細断型ロールベーラは30から100馬力のトラクタに適応し、価格は約350万円、減価償却費を除く物財費は10aあたり約26,500円でした。
今後も、生産物の品質、作付け体系、飼料作物の需要量と価格の検討、収穫調製機械の導入等を検証・検討しながら新たな耕畜連携モデルを構築できるよう取り組みを進めていく予定です。

おわりに
 ほかにも自給粗飼料の生産拡大に向けて様々な取り組みがされています。地域での土地利用や組合での機械の共同利用等を進めることで生産コスト縮減が期待できます。
表1 飼料用トウモロコシ栽培実証ほの概要(常陸太田地域農業改良普及センター調査)
面     積 1.5ha(那珂市)
前     作 H18:ジャガイモ+ニンジン H19:耕起のみ
堆     肥 牛ふんモミガラ堆肥 約2t/10a
播     種 平成20年5月16〜17日
品     種 カーギル ファームデント115
施  肥  量 化成肥料 N−P−K 2.6−2.6−2.6kg/10a
収     量 収穫日:平成20年9月1〜2日
実収量:3.7t/10a 生産ロールベール数:110個
質量:約500kg/個 ロールベールサイズ:直径85cm×幅85cm