県内では平成20年度,稲発酵粗飼料(以下,稲WCS)が約340ha作付けが見込まれています。また,稲WCSを利用する畜産農家戸数の割合は,昨年度,概ね酪農家80%,肉用牛農家20%になっています。各地域農業改良普及センターでは,乳牛や肉用牛への給与技術確立にむけて,給与実証試験や給与事例を調査しています。 
 今後,稲WCSの利用拡大が期待される肉用牛への給与事例について,結城地域農業改良普及センター及び筑西地域農業改良普及センター管内の事例を紹介します。

【事例1 結城地域農業改良普及センター管内】
○耕畜連携により稲WCSの収穫調製を実施しているA農家の給与事例
 繁殖牛への稲WCS給与量は分娩前後3ヶ月間に16kg/日,ヘイキューブ2.2kg/日,配合飼料1.8kg/日です(表1)。前述以外の時期は,平成18年から妊娠確認後,放牧しています。
 平成15年に稲WCS給与を開始してから,給与量の増加に伴い,初産月齢も22.5ヶ月齢(H15)から22.2ヶ月齢(H18)と早くなり,分娩間隔も給与開始時の389日(H15)から363日(H19)と短縮されています(図1)。
 また,子牛の生時体重は年々増加するとともに,流産等による病死率も低い傾向になっています。

表1 繁殖牛分娩前後約4ヶ月間の飼料給与量の推移

 また,生後4ヶ月齢〜10ヶ月齢時に輸入乾燥(チモシー)の50%を稲WCSに置き換える実証試験も実施したところ,H19に出荷された稲WCS給与牛と無給与牛の枝肉成績(表2)に,差は見られませんでした。育成期に良質乾草の50%を稲WCSに置き換えても産肉成績は変わらないと考えられます。
図1 分娩間隔の推移

表2 枝肉成績(2007年分)

【事例2 筑西地域農業改良普及センター管内】
○稲WCSを全量購入しているB農家の給与事例
 肉用交雑種の8ヶ月齢(導入時月齢)〜12ヶ月齢に対して,現物あたりチモシー5kg/日・頭と稲WCS2.2〜4.5kg/日・頭を給与(稲WCSの購入量により変化)しています。稲WCSの嗜好性はとても良く,見かけの増体も問題なく発育しています。稲WCS給与牛の初出荷はH20の夏予定となっています。

【今後の計画】
 肉用牛への飼料稲WCS給与技術の確立するために,繁殖牛,育成牛への調査を継続し,増体及び肉質への影響を検討していくことにしています。また,結城地域農業改良普及センター管内では,今年度,これまで,本県では取り組まれていなかった肉用交雑種の肥育後期(出荷前5ヶ月から)への給与実証を予定しています。