近年、「環境にやさしい農業」や「健康な土づくり」を推進する中で、堆肥の利用が求められています。
  そこで、各地に土づくり応援団が結成され、畜産農家の作った堆肥を耕種農家が利用する「耕畜連携」を進める運動が展開されています。
  ここでは、県西地域(筑西、結城、坂東各普及センター管内)で実施された耕種農家への堆肥利用に関するアンケートと県西版堆肥マップから、耕種農家の堆肥に関する考えを取りまとめ、今後の堆肥流通の一助としたい。
アンケート対象
  県西地域の普通作、露地野菜、施設野菜、果樹等の耕種農家666戸です。
堆肥を使っている農家は・・・
  一年に一回使用している農家は44%、一作ごとと一〜二年おきの使用を含めると72%の農家が堆肥を使っています。
  使用目的は、「土壌が改良され作物が作りやすくなるため」がトップで、以下「農作物の品質・収量向上のため」、「化学肥料の使用量削減」、「有機農産物を消費者が求めているため」と続きます。
  堆肥の原材料は、牛ふんや豚ぷん、鶏ふんにモミガラやイナワラ、オガクズを組み合わせたものでした。豚ぷんがやや多いのは、養豚農家が県西地域に多いことも関連していると思われます。
  入手先の5割が同一市町村内で、近隣市町村を含めると83%を占めており、搬送距離が短いこと、畜産農家の顔が見えること等が理由として考えられます。
  入手した堆肥をすぐ施用せずに堆肥舎等で保管する農家は79%います。その内四人に三人が切り返しをして、作物に合わせた堆肥を作る農家で、堆肥へのこだわりがかいま見えます。
堆肥を使わない農家は・・・
  使わない理由のトップは「堆肥を製造する手間や時間がない」ためで、「すでに有機質肥料を使用しているため必要ない」や「使用しなくても収量・品質が変わらない」という農家もいますし、「切り返し時の臭気」を心配する声もありました。

  将来、堆肥を利用する条件として、高品質で低コストは当然ですが、散布しやすい形態であること、近くで入手できること、切り返し時の臭気を押さえる技術の確立等が上位に挙げられ、散布や運搬の請負希望もあることがわかりました。
堆肥マップでは・・・
  県西版堆肥マップに掲載されている畜産農家は,99戸です。全て成分分析しており、ほとんどが周年供給可能です。

  また、散布までする畜産農家は15%しかいませんでしたが、84%は配達をしてもらえます。この堆肥マップについては、各普及センターに問い合わせ願います。
まとめ
  これから堆肥を使いたい農家は、臭気対策や堆肥の施用効果、安心して使える施肥設計、コスト試算等による技術支援を望んでいます。
  一方、すでに堆肥を使っている農家からの改善点は、「もっと完熟して欲しい」、「成分を明らかにして欲しい」でした。成分は表示の問題ですので、直ぐに改善できます。しかし、腐熟度は耕種農家側にストックヤードが無い場合は、畜産サイドで完熟させて利用者のニーズに合わせる必要があります。
  家畜排せつ物法施行により、今後家畜由来の堆肥は増加傾向にあります。今後安定的に流通させるには、「買ってもらえる堆肥づくり」を畜産農家は念頭におかねばなりません。
  また、エコファーマー等に取り組む耕種農家は健康な土づくりを実践し、消費者が求める有機農産物生産のためにも是非、堆肥を積極的に使って頂きたいものです。
  なお、本文は「農業茨城」平成17年12月号にも掲載してあります。