当研究所では、県内の和牛改良のため種雄牛の造成を行い、県内の農家に精液を供給しています。今回は、供用種雄牛について紹介します。
福徳(忠福−第20平茂)
鹿児島県から導入した本牛は、間接検定成績、鹿児島県での育種価評価結果から枝肉重量、脂肪交雑、ロース芯面積で大いに期待しており、質量兼備の種雄牛として供用しています。
産子は、平成17年3月以降に本県家畜市場に上場しています。発育、体型も良好な牛が見られ、10月までに上場された去勢20頭の平均は、日齢297日、体重297、税込価格467,617円、同じく雌20頭の平均は日齢295日、体重280、税込価格393,172円で取引されています。今後も安定して上場される予定です。
父:忠福(兵庫)、母の父:第20平茂(気高)という血統から、県内の繁殖雌牛には幅広く交配可能です。平茂勝の娘牛、鹿児島県からの導入牛に対しての交配も有効と考えています。
明光4(谷福6−糸光)
最近、子牛市場への上場は減ってしまいましたが、このごろ、肥育農家から、「明光4の産子は上場しないの?」との問い合わせもあります。明光4産子の特徴は、大きな枝肉重量、ロース芯面積、そして飼いやすさでしょう。
最近注目すべき枝肉情報が入ってきました。当研究所で育成をした子牛を、全農茨城県本部肉用子牛哺育育成センターで肥育した結果、試験牛9頭中、今までに出荷した7頭すべてが常陸牛に格付けされました(うち3頭はA−5)(表1)。
血統からみて、島根(第7糸桜系)の血液の入った雌牛への交配も有効と考えています。また、一貫経営においてはメリットが大きいでしょう。もう一度明光4の利用を考えてみてはいかがですか。
安福秀(安福165の9−糸光)
本牛は、平成16年11月に廃用にしました。産子は、子牛が市場上場時に小さい、肥育しても枝肉重量が小さい傾向にあります。農家からも飼いずらいとの話も聞きます。
しかし、畜産茨城第374号でも紹介したように脂肪交雑能力は優れています。それを裏付けるかのように、本年
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9月に行われた東日本和牛能力共進会の肥育区では、出品6頭すべてが常陸牛に格付け(うち3頭がA−5)されるというすばらしい成績を収めました(表2)。
血統的に、兵庫と島根のハーフですが、本牛は純粋兵庫のような体型で、育種価評価においても枝肉重量がマイナスであることから、増体能力の高い雌牛への交配が有効と考えています。また、乳用牛への交配も有効でしょう。
茨北安(北国7の8−安福)
今、最も推奨する種雄牛です。平成17年9月の育種価評価では、県基準値に対して脂肪交雑+1.81、枝肉重量+35.9とすばらしい評価を受けています。特に脂肪交雑では、民間有を含めてトップクラスの評価です。これはまさに「北国7の8」と「安福」の実力者同士の交配の結果でしょう(表3)。
このことから、本県では、平成19年秋に鳥取県で開催される全国和牛能力共進会へは、種牛の部、肥育の部とも茨北安の産子で参加することとしました。産子は、平成18年夏以降子牛市場に上場される予定です。また、交雑種は既にぬれ子として市場に上場されています。
交配では、北国7の8の娘牛以外には広範囲に利用可能です。先祖に島根(第7糸桜系)や岐阜の安福の血液の入った雌牛への交配も一つの手段ではないでしょうか。
北国栄(北国7の8−福昌)
平成17年9月の育種価評価では、県有牛としては茨北安に次いで脂肪交雑で高い評価を受けています(+1.56)。血統的には、茨北安と似ていますが、本牛は枝肉重量の育種価評価は平均並みです(表3)。
本牛の特筆すべき点は、現場後代検定において肉質等級が4等級以上に格付けされた割合が78%であったことです。利用に際しては、増体能力の高い雌牛や乳用牛への交配も有効でしょう。
最後に
茨北安、福徳、北国栄を現在は一般種雄牛として供用していますが、いずれも高い能力を持っていますので、生産された子牛の調査等を実施し、
必要に応じて茨城県育種改良協議会に諮り、基幹種雄牛として後継種雄牛の造成を検討しています。
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