〜はじめに〜 |
飼料用トウモロコシは高い飼料価値があるにもかかわらず、その栽培面積は年々減少しています。一方で耕作放棄地を利用したソバの栽培は増加しています。ソバは栽培期間が短いため、そこに飼料用トウモロコシを組み合わせれば土地が効率的に利用できます。耕種農家は飼料生産の作業請け負い(コントラクター)と家畜排せつ物の利用、畜産農家は生産された飼料の利用と家畜排せつ物の供給、という耕畜連携が図られれば、畜産農家は地域内で自給飼料が確保でき、耕種農家は有機物の投入による土づくりと作業受託による収入増が期待されます。最近開発された細断型ロールベーラーを利用すればさらに高品質で広域流通に適した飼料が調製されるものと考えられます。 |
これを確認するため昨年現地実証を行い、コントラクター成立の課題と対策について検討しましたので、その概要を紹介します。 |
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細断型ロールベール |
コーンハーベスターで刈取り・細断したトウモロコシに、細断型ロールベーラーでネットを巻きつけ梱包し、ロールベールを作ります。大きさは直径約85cm、重量350〜400kg程度になります。これをベールラッパーで密封し、ロールベール・ラップサイレージに調製します。この方法で作られたサイレージは乳酸発酵が旺盛で品質が非常に良く、主に乳牛の飼料として使われます。 |
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現地実証 |
桂村(現城里町)内の1.2haの圃場(前作ソバ)を使いました。5月23日にRM(相対熟度)95のトウモロコシを播種し、8月2日に収穫、梱包、密封しました。お盆明けに播種するソバの作業を控えていたため、糊熟前期の水分の多い状態での収穫でした。このため、ロールベールの重量は通常より重い約450kg、水分含量は72.5%でした。ロールベールは岩間町の酪農家まで運び、9月上旬より牛に給与しました。水分含量が高かったにもかかわらず、phは3.6まで下がり、牛の嗜好性は良好でした。 |
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コントラクターの課題と対策 |
一耕種農家が畜産農家から飼料作の栽培とロールベール調製作業を請け負う場合、約20haの作付けがないと経営的に困難が生じるものと思われます。このため、一般的規模の酪農家では4〜5戸が5年程度の期間、飼料の利用を約束する必要があります。 |
また、ソバを基幹作物としてトウモロコシを組み合わせる場合、次のような課題が生じます。
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@ | 除草剤は土壌処理のみではソバが防除できず、体系処理が必要です。ソバがトウモロコシに混入しても飼料としては問題ありませんが、収穫時に根ごと巻き込むことがあり、サイレージの品質低下を招く恐れがあります。 |
A | トウモロコシは早生品種を使用するため、収量が低くなる可能性があります。 |
B | 後作ソバの作付けを考えると、トウモロコシの収穫期間は限られます。播種時期を早める対策をとっても20ha程度作付けする場合には、若刈りする面積が増え、収量及び品質が低下する恐れがあります。 |
以上のことから、この試みを本格的に進めるための対策として、下記の2点が挙げられます。 |
@ | 畜産側は継続的、安定的な飼料の利用。 |
A | 耕種側は土地を確保し、トウモロコシ中生品種の作付け(年一作体系)が可能なブロックローテーションの実施。 |
今後この経験をもとに、いろいろな可能性について検討したいと考えています。 |
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