1.はじめに 交雑種(F1)肥育牛は、県内で28,100頭飼養されており、肉用繁殖雌牛を含めた全肉用牛飼養頭数63,600頭の半分近くを占めている(以上H15.2.1農林統計)。 那珂郡大宮町の農業生産法人(有)瑞穂農場は、乳牛の他に肥育牛を約3千頭余飼養し、飼料給与もTMR形態で行い粕類の利用も図って、低コスト生産を目指している。稲敷郡東町で生産された飼料稲(平成13年度生産)をホールクロップサイレージ(以下「稲WCS」という)にして、瑞穂農場において当研究所とともに、F1肥育牛への給与調査を実施したのでその概要を紹介する。 2.調査の方法 3区設定し、飼料は日本飼養標準を参考に、TMR形態で給与した。肥育前期に稲WCSを給与し、後期は全区同じ飼料で粗飼料は稲わらを給与した。 表1 供試頭と飼料給与
表2 調査飼料配合割合(TMR)
3.結果 1)稲WCS馴らし給与期間の状況 平均9ヶ月齢から2ヶ月間馴らし給与期間をとった。当初稲WCSを含め各飼料を一度にコンプリートフィーダーに約30分かけてTMRを作ったが、ミキシング後の稲WCSの長さが10〜30cmあり切断が不十分であったためと思われ、稲WCSのみ食い残しが多く見られた。試行錯誤し、最初に稲WCSのみを約30分コンプリートフィーダーにかけ、その後他の飼料を混ぜ、さらに30分かけることで5〜15cmに切断され、牛が残さずに食べるようになった。その後11〜14ヶ月令まで本調査を開始した。 2)飼料摂取量、増体量等 給与した各飼料の成分について分析し給与設計をした。全カロチンが稲WCSは13.7mg/kgあった。 TMR飼料の飼料摂取量は本調査中の11〜14ヶ月令では、稲WCS区の総量が原物で14.4kg/日頭、乾物で7.8kg/日頭であった。稲WCS区は慣れてくると、食い込みが良く嗜好性は良かった。日増体量はチモシー区についで稲WCS区が良く0.80kg/日頭であった(表3)。 表3 調査中の日増体量と飼料摂取量(1頭当たり)
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3)飼料稲の経済性 今回東町の飼料稲(品種:チヨニシキ、はまさり収穫面積5.2ha)を使ったが、栽培初年度で栽培技術に習熟してなかったと思われ、10aあたり原物収量は1t台で少なかった。「クサホナミ」など高収量品種は、乾物収量で2t/10a近くあることが報告されている。 以下乾物中成分が比較的似ているチモシー乾草並の栄養価値を考慮して、今回の分析値をもとに試算した。TDNでみて原物収量で3,000kg/10aあれば、稲WCSの当農場着値で約47千円/10aと試算された。ただし稲WCSの保管場所、運送手段の確保等が必要であり、運賃を考慮した場合の原物圃場価格は、原物収量で3,000kg/10aあれば、約35千円/10aと試算された。(表4) 表4 チモシー乾草のTDN価格より、稲WCSの原物価格の推定
4)血液成分 本調査終了時(稲WCSの給与終了時14ヶ月齢)の血中レチノール(ビタミンA)濃度は、チモシー区が最も高く92.0IU/dlあり、稲WCS区は75.0IU/dlであった。日本飼養標準では、30〜40IU/dl以上に維持するとされており、今回食欲不振等ビタミンA欠乏症状を示す牛は見られなかった。 5)増体、枝肉成績 3区とも生後約28ヶ月齢でと畜して出荷体重は、稲WCS区が738kgであった。稲WCSを給与した本調査開始時から出荷までの日増体量は、稲WCS区が0.75kgで最も良く、ほか稲WCS区+チモシー区が0.71kg、チモシー区が0.69kgであった。枝肉重量は、粗飼料全量稲WCS区が445kg、稲WCS+チモシー区が463kgで、チモシー区が431kgであり、稲WCSを含む給与区(稲WCS区、稲WCS+チモシー区)が、非給与区(チモシー区)より良かった。肉質は、稲WCS区が格付け3以上が63%、BMSNo.が3.4でチモシー区との有意差が認められ最も好成績であった(表5)。 表5 肥育前期に稲WCSを与えた枝肉の格付け
以上稲WCS給与区は、出荷時点まで見て増体、肉質とも最も好成績であった。 |