年々増加している耕作放棄地の畜産利用を図るために、畜産センター肉用牛研究所(大宮町)と「耕作放棄地等繁殖和牛放牧利用技術検討会(農業改良普及センター、県北地方総合事務所、金砂郷町、大宮町他関係団体で構成)」は、金砂郷町の耕作放棄地(元は畑)に繁殖和牛を放牧して実証展示し、関係者に呼びかけ平成15年6月18日(水)に現地での説明会を開催した。
 耕作放棄地での放牧は県内で初めての試みで、設置と取り外しが容易にできる低コストの電気牧柵を利用した。3〜10年耕作放棄された土地2反歩に繁殖和牛2頭を5月29日から20日間放牧した。ススキ、クズ、セイタカアワダチソウ、ヨモギの順で茎まで食べられていく様子に近くの繁殖和牛農家もたびたび観察に訪れ関心の高さが伺え、当日は農家等から活発な質問が相次いだ。 この放牧は、草刈の労力が大幅に軽減され見通しが良くなって地域の景観が向上し、農作物を荒らすイノシシ対策にも効果があると言われている。
 畜産農家では飼養管理労力、飼料費の節減、適度な運動により繁殖成績の向上が期待でき、資源循環型で省力・低コストな飼養方法である。
 現地説明会終了後、茨城県草地協会主催の講演会が開催され、講師から先進地での放牧事例や、普及に向けてのポイントが紹介され、是非取り組みたいとの声が多く聞かれた。
 本県の耕作放棄地は約12千ha(平成12年)あり、うち約5千haが県北地域で、繁殖和牛も県北地域に集中している。当面県北地域を中心に関係機関の働きかけによる耕畜連携での普及が望まれ、繁殖和牛の増頭も期待できる。なお当検討会は、8月に耕作放棄水田での放牧を予定している。