「組合員とともに歩むコントラクター」


朝倉 実行 さん




 美野里町は、茨城県のほぼ中央にあって、東茨城郡の最南部に位置しています。東京からは80km圏内、また県庁所在地の水戸市および県南の土浦市へはそれぞれ約20kmで国道6号線、常磐高速道、JR常磐線が通る経済的にも恵まれた立地条件にあります。 農業は町の基幹産業であり、平成15年の農業産出額は103億1千万円となっています。



 昭和11年に人と家畜と土地の三位一体の農業を協同の力で推進することを目的として「堅倉村畜牛組合」が結成されました。以来、幾多の試練と苦難を乗り越え、昭和36年「美野里酪農業協同組合」として新たなスタートを切り現在に至っています。 当初は組合166名、飼養頭数481頭で経営形態は複合経営が主でしたが、現在は組合55名(正組合員50名、准組合員5名)うち生乳出荷者40名、飼養頭数5,119頭(成牛3,698頭、育成牛1,421頭)、年間生産乳量28,163t(日量77.1t)となり経営形態も大型酪農専業経営となっています。











 当組合の利用事業の歴史は、昭和37年新農村事業として、トラクター、ローターベーター、ディスクプラウを導入し、組合員の要望に応えて耕起作業を開始した時に始まりました。当初は、北海道や青森県、千葉県など先進地への技術研究を度々行いました。 また作業時間により算出する利用料金制度を確立するなど、利用事業(組合コントラクター)の基礎がこの頃できあがりました。
 昭和42年には、それまでの耕起作業に加えて、バキュームカー、マニアプレッダー、モアー、クロップ・チョッパー等を導入し、堆肥散布、整地、収穫、運搬と粗飼料生産の一貫作業体系が確立しました、ばら撒きのトウモロコシ・ソルゴー混播をチョッパーで収穫する方式は、その後20年以上続きました。
 また、同時期には、小川町の航空自衛隊百里基地内の滑走路わき草地70haの利用も盛んに行われました。
 その間、徐々に各農家は規模を拡大し、飼料畑の面積も増え、さらに輸入乾草を安価に購入できるようになるなど、利用事業を取り囲む環境も大きく様変わりしました。
 百里基地の利用が昭和62年で終了し、代わって昭和63年ごろから条播のトウモロコシの作付けが増えはじめ、平成元年には収穫作業効率化のため、自走式コーンハーベスターを導入しました。この機械は旧東ドイツのフォルトシュリット社製E281C型で170馬力、畦に関係なく前面刈りできるものでした。
 その後も各農家の高品質・多収量への意欲的な取り組みが続き、条播によるトウモロコシ・ソルゴー混播の作付け体系が、数年のうちに急速に普及しました。平成8年9月には、4条刈りで最大出量300馬力のニューホーランド社製FX300型自走式ハーベスターを導入しました。この機械はギャザリングチェーン方式の一般的な 刈り取り機構ですが、以前の機械よりもソルゴー刈り取りに優れています。
 さらに平成11年7月に2条刈りハーベスターを更新し、また平成13年8月には新たに4条刈り最大出力358馬力のニューホーランド社製の FX28型自走式ハーベストを導入しました。 これにより、自走式ハーベスター2台体制が確立し農家の高品質粗飼料生産の要望に応えるとともに、さらなる面積拡大への対応が可能となりました。
 入り口が狭いため自走式ハーベスターが入れない圃場への対応としては、2条刈りハーベスターを使用しています。現在約10haの圃場で作業しています。
 MF399 4WDトラクター + フェラボリ946 2条刈りハーベスター



 現在、組合員55名、うち生乳出荷者40名ですが、その中で組合コントラクターの受託農家は28名となっており、その他は任意の飼料生産組合又は2〜3戸の共同等で組合と同様の作業体系を確立し作業を実施しています。なお、組合コントラクターはシーズンオフ等に日程的に余裕がある場合は、組合員外の作業も受託しています。



 春の耕起作業は、4月を中心に7月ごろまで、例年合計にして約50〜60haの圃場を2連リバーシブルのプラウを使用しています。オペレーターは、職員1名で対応しています。ロータリー耕については、現在は各農家が機械を保有しているため申し込みもあまりなく、主に員外からの申し込み2〜3ha程の稼動となっています。また、播種等の作業も農家自身で実施しており、現在はほとんど受託はありません。

 5月の麦牧草類の刈り取りはクロップ・チョッパーを使用しダイレクトカットしたものをダンプでサイロまで運搬しています。昨年は合計で約6haを、トラクターのオペレータ1名、2tダンプトラックが2台2名という1組のチームで作業しました。例年、面積的には5〜6ha程の作業申し込みを受けています。

 夏のトウモロコシ+ソルゴー混播の刈り取りは、例年8月の初めから9月の上旬までの間、恒例の町のイベント「ザ・みのりふるさとふれあいまつり」の日を除いて毎日連続して作業を実施します。さらに遅撒きのトウモロコシについても9月下旬から10月にかけて作業のボリュームに合わせて1組か2組で刈り取りをします。
 それらの中でも、特に8月中旬の最盛期には、朝6時前から夕方8時位までの作業になります。昨年の夏は、連日好天に恵まれ合計190haの面積の刈り取りを順調に行うことができました。
 この時期の作業は、358馬力の4条刈り自走式ハーベスター+3〜4台の2tダンプトラックで1組、300馬力の4条刈り自走式ハーベスター+3〜4台の2tダンプトラックでというかたちでもう1組、合わせて8人ないし9人程度のメンバーで作業を行っています。 組合所有のダンプトラックは5台なので数が足りない部分については、農家所有の2t車や4t車を借り上げて対応しています。また、入り口が狭いため自走式ハーベスターが入れない圃場が約10haほどありますが、これらについては、97馬力のトラクターで2条刈りハーベスターを駆動し作業しています。

 なお、自走式ハーベスターのオペレーターは1台について酪農協職員1名が全日程を乗務し、もう1台については農家の後継者3名に日程を調整して出してもらっています。また、ダンプトラックの運転手は、アルバイトを募って毎日6名以上確保しています。

 ソルゴーの2番刈りは、通常11月上旬から12月上旬まで約1ヶ月かけて作業していますが、昨年は10月に極めて天候が悪く、その影響で11月に入っても圃場の条件が改善しなかったため、作業がやや遅れました。面積は夏の好天により再生ソルゴーが豊作となったこともあり、前年の倍以上の約130haとなりましたが、圃場によっては年内に作業条件が改善されず、最終的には作業を断念した所も若干ありました。
 刈り取り作業は、基本的に自走式ハーベスター1台とダンプが2台か3台の1組で実施します。ソルゴーの再生が天候の影響を強く受けるため、生育状況によっては自走式ハーベスター2組の作業になる場合もあり、逆に生育の悪い場合にはクロップ・チョッパーを使用することもあります。
 冬期の2番刈り終了後については、組合員農家の作業はほとんどありません。機械の掃除をしてメンテナンスをします。また、員外の一般の農家等からのプラウ耕やロータリー耕の申し込みにも対応しています。




 圃場でハーベスターにより刈取細断された飼料作物は、伴走するダンプカーに積み込まれます。
ダンプは満杯になると圃場から各農家のサイロまで運搬します。
地下式コンクリート角型サイロを使用していましたが、現在では安価なポリフィルムを使用したスタックサイロが主流となっています。 スタックサイロは、昭和40年代終わりごろから固定サイロの補助として使用されてきましたが、なかなか良いサイレージを作りにくいという欠点がありました。
この解決策として現在では、建設機械のパワーショベルが使用されるようになっています。これにより、運ばれてくる材料を容易に積み上げることができ、充分に整形・鎮圧した上をポリフィルムで覆い、 さらに覆土することにより良質サイレージができあがります。これらの作業のほとんどを重機でできるので農家は非常に楽になりました。 また重量のある重機で鎮圧するので二次発酵も抑えられ、給与時の取り出しも大型のホイールローダーやサイレージカッターを使用して容易にできます。

 なお、重機作業については、農家が機械を保有している場合は農家自身で、また保有していない場合は専門の土建業者に依頼して実施しています。