「河川敷放牧と1万キロ牛群をめざして」


酒井 由雄 さん


ご家族全員の写真 ・ ご本人向かって後列右から2番目








 酒井氏の酪農経営は、水田300a (内借地45a) の水稲と放牧地(河川敷) 500a ・ 転換田229a(内借地109a)の水稲との複合経営で営まれています。経営の規模は、成雌牛頭数33頭程度、育成牛頭数11頭、子牛頭数5頭の飼養となっています。
 酪農経営の家族労働力は、本人と両親が主体的に飼養管理を行い奥さんは手伝い程度となっています。作業分担は、家庭できめて行っています。
 作業の分担は、本人が飼養管理全般で搾乳、人工授精、堆肥処理、記帳を行い。両親は飼料給与や育成牛の管理を行っています。



@地域の状況

 当地域(河内町)は、首都東京50km圏内、茨城県南部に位置し、東西に細長く平坦で温暖な地域です。南には利根川を境に千葉県と接しています。
 総農家数1,070戸、その内専業農家89戸、兼業農家981戸、(第1種250戸、第2種731戸)、農家人口5,093人(うち男 2,543人、女2,550人)の状況になっています。
 畜産の状況は、酪農、養豚、肉用牛、養鶏の順にあり畜産の中では、酪農が盛んとなっています。



A経営の推移

昭和15年 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ 祖父がホルスタイン1頭を導入酪農を始める
昭和50年 耕種+酪農 成雌牛 10頭 アメリカより後継牛導入
昭和55年 酪農+耕種 成雌牛 30頭 移転、30頭牛舎建設
昭和57年 酪農+耕種 成雌牛 30頭 本人農協へ就職
昭和58年 酪農+耕種 成雌牛 30頭 パイプラインミルカー導入
平成 6年 酪農+耕種 成雌牛 30頭 本人、農協を退職し就農
牛群検定に加入
平成 7年 酪農+耕種 成雌牛 30頭 2 t ダンプ購入
平成 9年 酪農+耕種 成雌牛 30頭 県高能力乳用種雌牛増殖
事業で高能力牛導入
平成11年 酪農+耕種 成雌牛 30頭





@牛群の改良

 昭和50年に県乳用種導入事業によりアメリカから高能力牛を導入し牛群の基礎とした。



A牛群検定への取り組み

 個体ごとの飼養管理を徹底させることが重要であると考え、牛群検定に加入し検定結果をもとに検定指導員・獣医師と検討し、飼養給与や乾乳時の飼養管理、子牛の育成技術の習得に努めた。



B人工授精師資格取得

 繁殖成績安定への取り組みとして資格取得を行った。



C河川敷放牧の実施

 牛のストレス予防として、充分な運動をさせ、又、放牧地までの移動時に発情の発見・肢蹄病等の発見にも役立ち、あわせて、削蹄も早く簡単に済ますことができた。



D牛乳のブランド化の推進

 河川敷放牧の特色を生かし、乳業メーカーの協力を得て「利根放牧牛限定牛乳」という商品を販売し経営の安定をはかった。



E受精卵移植への取り組み

 県の事業により北海道から高能力牛を導入し受精卵移植をすることにより牛群の改良を進めた。
 導入された乳牛から受精卵を取り、県内の酪農家にも提供するなどし乳牛の改善に貢献した。





 改善点として、現在、自家配合を作りヘイキューブ・ビート等の粗飼料とミネラル飼料を分離給与していますが、作業に手間がかかるうえ、選び食い、食べ残しも見られるため、TMRの導入を検討している。TMRだと餌の食い込みも良くなり飼料設計通り採食されることにより、更に乳量、乳成分の向上につなげていく。

 糞尿処理で、現在の堆肥舎20坪程度と小さく、河川敷放牧で舎飼いの半分とはいえ、堆肥を処理するためには充分とはいえない。

 近い将来、増頭し規模拡大するためにも堆肥舎の新築が必要となっている。

 自給飼料の拡大として、今後、トウモロコシの作付を増やしバンカーサイロを導入、年間給与できる体制作りをしていく考えにある。

 これからの酪農家のあり方としては、後継者が進んで引き継ぐ経営とするためにある程度の所得を確保し、ゆとりある経営を目指していきたいと考えています。
 それと、現在、河川敷で乳牛を放牧していますと、消費者の方がしばしば足をとめて牛達を見ているとのことで、食料の生産地として自覚を持ち、誰でも気軽に牛舎に入れるような環境作りを目指すとともに、雄大な川の流れと青い空、牧草を渡る風と牛達の群れ、その穏やかな時間、自然環境を消費者に提供出来るような酪農経営を続けていきたいと考えている。

 

河川敷の放牧風景