(三重県科学技術振興センター農業技術センター・畜産部の成果から)

 
 飼料自給率が著しく低下しつつある中、水田においては転作割当面積の増加等に伴い、特に中山間地帯においては水田の遊休地、耕作放棄田が増加の傾向にある。このような現状の中、転作田を有効に利用した粗飼料生産技術を確立することは畜産農家にとっては飼料の生産基盤を拡大し、飼料自給率の向上、糞尿の土地還元を図るため、また耕種農家にとっては水田の高度利用、農地の保全の面から重要な課題である。そこで、畜産農家、耕種農家の安定化を図るため、転作田を有効に利用した稲ホールクロップサイレージ生産のための収穫調整の機械化一環体系を確立した。なお、本機械体系は軟弱ほ場を対象とした作業体系である。


 稲ホールクロップ用カッティングロールベーラーは五条刈り自脱型コンバインをベースとし、脱穀部の代わりにロール成形部(φ900o)を搭載したものであり材料稲をダイレクト収穫し、さらにディスクカッターで切断後(平均切断長:10p)、ロール成形が可能である。(写真1・図1

写真1
図1 飼料イネ用カッティングロールベーラの概略図
     収穫梱包作業機(ダイレクトカット方式)
飼料イネ用ベーラの主要緒元
全長 4,500mm
全幅 1,700mm
全高 2100mm
機体質量 2980kg
走行装置 ゴム覆帯
エンジン出力 48PS/rpm
変速方法 HST
刈幅 1,636mm(五条)
ロール寸法 φ1,000×1,000mm
切断機構 ディスクカッタ
(切断長:150mm)

ロールベーラは走行装置にゴムローラーを利用した自走式ベールラッパであり、ロールベーラの作業方向(ロール排出方向)と同一方向からロールが直接積載でき、ロールを地面に落とすことなく連続作業が出来る。(写真2・図2)

写真2
      図2 自走式ベールラッパの概略図
           密封式作業機(追従作業方式)
自走式ベールラッパの主要緒元
全長 2,600mm
全幅 1,350mm
全高  200mm
機体質量 1,195kg
走行装置 ゴム覆帯
エンジン出力 8.5PS/rpm
適応ロール寸法 φ900〜1,000mm
積込み機構 油圧式グリップアーム
荷降ろし機構 テーブルリフト・ダンプ式
(最大リフト量:910mm)


ロール搭載後は密封作業を行いながら畦畔まで移動し、ターンテーブル下部に取り付けたテーブルリフトを上昇させることにより畦畔上の運搬車の荷台にも直接荷降ろすことができる。
転換畑のロールベールサイレージ調製において、密封後のロールを一梱包ごとに畦畔上の運搬車に荷降ろしした場合の全作業時間は、25分/10aである。

・特に中山間地帯の排水不良田での稲ホールクロップサイレージの生産に適する。

・軟弱な転換畑におけるロールベール密封作業に適する。

・水稲を飼料利用する場合でも栽培面では食用稲の省力栽培技術がベースになる。

・本機はすでに実用化され、市販されている。

 

(生産系特定産業技術研究推進機構畜産工学研究部)


  青刈りトウモロコシの飼料価値の高さは十分認識されているが、その作付け面積は昭和62年を境に減少してい る。(図1)この理由として@収穫作業は組み作業が前提となるが、労力確保が困難になってきた。A一般に炎天下での作業となる場合が多く、労働負担が大きい等があげられ、トウモロコシ離れが進んできた一つの原因と言われている。したがって、青刈りトウモロコシ作付面積の減少に歯止めをかけ、粗飼料自給率を向上させるために、まずこの二点を解決するためフォレージハーベスタで細断された青刈りトウモロコシを成形・梱包できるロールベーラを開発した。

写真1.改良したトウモロコシロールベーラによる収穫作業


  本ベーラでは、一条刈りフォレージハーベスタで細断、吹き上げたトウモロコシをホッパで受ける。(写真1)吹き込まれた材料は、供給コンベアで成形室(定径式、呼び直径90p)に送り込まれ、成形・梱包される。(写真2)ベールの梱包はネット(幅1.2m)の巻き付けにより行う。(写真3)梱包したベールはベールラッパで密封する。ベールの梱包からラッピング完了までに生じるロスは15oで5〜10%である。ベール一個の質量は含水率65〜70%の時で320〜380kgである。サイレージ品質を草地試で調査した結果、良質なサイレージ品質であるという結果を得ている。また、酪農家での給与調査では上々の嗜好性であった。

写真3.トウモロコシロールベールの排出 写真2.改良したトウモロコシロールベーラー
試作機の主な諸元
細断部 刈取条数 1
カッタヘッドの型式 シリンダ型
カッタヘッド幅(mm) 265
設定切断長 15
ベーラ 呼称ベール直径(m) 0.9
全長(m) 3,555  a
全幅(m) 1,475
全高(m) 2,335 a,b
全質量(kg) 1,020 c
a・・・収穫作業時
b・・・エクステンションホッパを含まず
c・・・ネットなし

・青刈りトウモロコシの省力収穫体系に有効な機械体系として活用が期待できる。

・さらに、ロスの減少、操作性及び作業の向上を図る必要があり実用化に向けて改良を加えていく。

(写真提供:生物系特定産業技術研究推進機構畜産工学研究部)

飼料作物増産のための一方法として新技術を紹介しました。新農業基本法の骨子の一つである自給率向上の中で 、特に土地利用型作物の増産が唱われ国民の合意が得られています。すなわち、官民あげて飼料作物増産に取り組むことになっています。今後、国の「飼料作物増産推進計画」を発表を受け、次年度は県、市町村において計画が作られる予定です。この様な新技術が普及し、飼料作物の増産に寄与することを願います。