●放牧頭数
 放牧頭数は3頭以上だと序列が形成され、また1頭だけだと不安になり脱柵しやすくなります。そこで2頭での放牧をお勧めします。(放牧経験のない牛を放牧するときは、放牧経験牛と一緒に放牧します。草の食べ方や、歩き方を早く覚えます。)


●放牧面積と放牧可能日数
 耕作放棄地の草種は様々であり、放牧時期によっても牧養力は変動するので、一概に放牧頭数と放牧可能日数を述べることはできません。しかし山口県畜産試験場のデータでは、繁殖和牛2頭を放牧する場合の目安は、10a当たり10日程度との報告があります。
 また畜産センター肉用牛研究所での放牧結果を下記に示しますので参考にしてください。
 繁殖和牛(妊娠牛)を2頭放牧し、特に問題なし。

第1回H15.5.29〜H15.6.18 20日間 20a 元畑 (主な草種:セタカアワダチソウ、ススキ、クズ)
第2回H15.8.4〜H15.9.24 52日間 30a 元水田 (主な草種:セタカアワダチソウ、ススキ、クズ)
第3回H15.9.24〜H15.10.27 33日間 20a 元畑 (主な草種:セタカアワダチソウ、ススキ、クズ)
・第1回と第3回は同一場所で、計53日間放牧(年間で2ヶ月間利用できる)
・第2回と第3回に同一牛(2頭)を継続して放牧し、正常分娩〔12/19分娩(♀28s)、12/21分娩(♂37s)〕した。

 【参考】放牧牛が生草を食べる量:体重の約10%

 (1)主な草種
 耕作放棄地に生育する草は、以下の3種が主体となることが多いようです。
 セイタカアワダチソウ:多年生、成長時期4〜11月、高さ1.5〜3m、種子及び地下茎で繁殖
 ススキ:多年生、成長時期4〜11月、高さ1〜2.5m、種子及び地下茎で繁殖
 クズ:多年生のつる草、4〜11月、つるの長さ数m、種子及び地下茎で繁殖

 耕作放棄地に数年間放牧を続けると、山野草は衰退してきます。そこで牧草の作付けを行なえば、牧草地や採草地に替えることができます。

 (2)牛が食べる草・食べない草
 @食べる草
 ススキ クズ ヨモギ セイタカアワダチソウ ササ類 ノシバ 竹 など
 A食べない草
 オナモミ 出穂期のチカラシバ ヤマゴボウ ノイバラ その他毒草※
 ※放牧牛は本能的に放牧場の毒草を採食しません。しかし毒草を刈り取って給与すると、採食することがありますので注意が必要です。

 (3)耕作放棄地の草種別栄養価
区分 原物中
乾燥物

DM
可消化養
分総量
TDN
可消化粗
蛋白質
DCP
粗蛋白質

CP
ススキ
      出穂前
      出穂期

26.4
32.7

14.7
17.4

2.0
1.3

3.5
2.6
クズ 35.0 17.8 3.7 5.8
セイタカアワダチソウ 18.9 10.2 1.4 2.2
ヨモギ 20.7 15.3 3.2 4.0
(参考)
イタリアンライグラス
  1番草出穂前
  1番草出穂期
  1番草開花期


16.3
15.3
21.7


11.8
10.7
12.9


2.3
1.6
1.0


3.0
2.1
1.8
オーチャードグラス
  1番草出穂前
  1番草出穂期
  1番草開花期
  1番草結実期

17.6
19.5
26.3
27.2

12.1
12.4
15.1
12.3

2.3
1.5
1.2
1.2

3.1
2.3
2.4
2.3
(日本標準飼料成分表 2001年版)