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笠間地域青年経営者クラブの養豚後継者が取り組んだプロジェクトについて
─笠間地域の農作物を活用したブランド豚の開発─
茨城県県央農林事務所




 プロジェクトの内容とそのきっかけ
 「第54回全国青年農業者会議発表会が,平成27年3月3〜4日に埼玉県さいたま市の大宮ソニックシティで開催され(関東ブロック農村青少年(4H)クラブ連絡協議会等主催),笠間地域青年経営者クラブの柏井一斗さんが,畜産部門で農林水産省経営局長賞を受賞しました。
 柏井さんは笠間市在住の有望な養豚後継者で,父母と3人で母豚200頭の一貫経営をしています。
 地元笠間が栗の日本一の産地等であることから,その規格外品や作付が拡大している飼料米等を活用した新ブランド豚「四季豚」の開発に取り組みました。この取組みが営農技術や経営能力の向上,組織化活動の活性化を図る上で有意義であるとして高い評価を受け,この度の受賞となりました。
 このブランド豚は,ドングリを給与して飼育するスペインのブランド豚「イベリコ豚」をヒントに,ドングリの代わりに栗を給与しても,良質の豚肉が生産できるのではとの発想から開発されました。きっかけは近所で栗を生産する先輩農家との会話の中からで,この先輩から規格外栗の提供を受け,試しに給与したのが最初でした。
 この結果,栗を給与した豚肉はおいしいことを確認できましたが,周年供給が困難なことが問題となりました。一方,柏井さんは以前から消費者への直売や飲食店との直接取引では,一般の豚肉との差別化が必要不可欠であると考えていました。そこで,秋期収穫の栗以外に,四季折々の農作物を豚に給与し,季節ごとに違った特徴のある豚「四季豚(しきぶた)」を作れないかと考えました。
 所属する地域青年経営者クラブには,様々な品目の生産者の仲間がおり,協力して季節ごとの農作物を豚に給与することが可能でした。農産物による肉質の特徴付けが可能であるか,また,四季豚に適する農作物を明らかにする試験を行うことができたことから,「笠間地域の農作物を活用したブランド豚の開発」の取組みが実現しました。
 取組みの内容は基本的に出荷前の約2ヶ月間,配合飼料の2割分を「栗,米,芋(サツマイモ),麦」を給与して,嗜好性や平均日増体量,肉質の化学分析等を試験したほか,試食によるアンケートを実施し,評価しました。
 その結果,栗と米が「食べ比べ」での高評価や入手のしやすさ,肉質が特徴的であるという面で有望,その他は検討が必要・課題ありと評価しました。今後は,理想とする肉質になるような複数の農作物の組み合わせを検討し,取組みを通じて地域の生産者との結びつきを強め,地域おこしなどの活動にもつなげたいと話しています。
 このような農業・畜産の経営活動を通じ,地域の活性化に取組む若手担い手の活動を,農林事務所は,今後も技術・経営面で支援していくこととしています。
以下に,発表要旨を紹介します。


 結果と考察の概要
 (1)発育への影響と生産コスト 表1(結果1)
 栗,芋,米は食いつきがよく,発育も良好で,飼料価格が安いため生産費は配合飼料より4〜5%安くなった。麦はやや発育が悪く肥育期間が延びたため,飼料価格は安いが生産費は配合飼料並みとなった。
 (2)肉質の化学分析
 分析結果16項目のうち,農作物によって異なる傾向があったのは10項目であった(表2)。特徴的な結果として,米は脂の口溶けの良さに関連するオレイン酸含量が高く,融点が34℃と低かったが,栗はオレイン酸含量が低く,融点が45℃と高かった(図1)。また,赤身のうまみ成分であるグルタミン酸含量は米,麦で高く芋で低かった(図2)。
 (3)アンケート調査
 @ 試食評価
 小学生〜70代の男女を対象に四季豚を試食してもらい,感想を聞いた(下表)。




  





 考察
 ・栗,芋,米の活用は生産コストの低減が望める(表1)。
 ・栗,芋,米,麦で,それぞれ異なった特徴の豚ができた(下表)。



 考察
 ・今回の調査では反復をとれなかったので,今後も農作物と肉質との関係を調査していく。
 ・今回は秋の農作物が主だったため,他の農作物も検討が必要である。
 ・農作物ごとに飼料適性や肉質への影響は異なることから,1つの農作物ではなく,理想とする肉質になるような複数の農作物の組み合わせを検討したい。
 ・この取組を通じて地域の生産者との結びつきを強め,地域おこし等の活動にもつなげていきたい。