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茨城の放牧事じょう・県北家保の放牧衛生
茨城県県北家畜保健衛生所



茨城県では,昭和30年代後半から50年代前半に公共放牧場が整備され,現在,県北地域の6放牧場が市町村や団体の管理のもとで利用されています。放牧期間は概ね4〜11月で,一部の放牧場では冬季放牧も行っており,繁殖和牛や乳用牛の育成牛が預託されています。
 放牧場で過ごした牛は,広い牧野で十分な運動をすることにより足腰が強くなり耐用年数が延長したり,繁殖成績の改善等が期待できます。また,飼養者の飼養管理労力の省力化や,飼料の給与が削減される等による低コスト化も可能です。
 しかし,牛によっては急激な環境の変化によるストレスで健康状態が悪くなることや放牧場で病気に感染することがあるので,県北家畜保健衛生所では牛の病気・異常の早期発見のため,放牧期間中に月1〜2回,衛生検査を実施しています。検査では,1頭1頭の牛の健康状態の観察と,血液を採取して,貧血状態の指標となるヘマトクリット値の測定と血液を顕微鏡で観察することでピロプラズマ病の感染状況を確認しています。ピロプラズマ病は,ダニの吸血によりピロプラズマ原虫が牛の血液内に入り,赤血球に寄生し貧血を起こす放牧場で問題となる疾病です。茨城県の放牧場では,小型ピロプラズマ病が存在するため,殺ダニ剤を牛体に塗布したり,抗原虫薬を投与する等の対策を行っていますが,毎回の検査結果を総合的に判断して,具合の悪い牛は隔離や治療を行うように管理者に指導しています。
 また,平成27年度からは全ての放牧場で牛ウイルス性下痢・粘膜病と牛白血病の検査を実施しています。特に,牛白血病は近年県内でも増加傾向にある疾病で,外見からは感染が分からないため,知らない間に感染が広がる恐れがあります。主に血液を介して感染するため,病気を媒介する吸血昆虫の対策や感染牛と非感染牛の接触を避けることが重要です。各放牧場では,吸血昆虫対策としてアブトラップを設置したり,定期的な牛白血病抗体検査により感染牛と非感染牛を分けて管理する分離放牧等,牛白血病の感染防止対策を実施しています。
 茨城県の公共放牧場では放牧場管理者,牛飼養者,県北家畜保健衛生所が一体となり,健康でたくましい牛を育てています。




ピロプラズマ原虫



アブトラップ