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飼料用米ソフトグレインサイレージ調製にチャレンジ!!
茨城県農業総合センター 専門技術指導員 加藤 康明


 飼料及び飼料用米を取り巻く情勢
 飼料用穀物の国際価格は,高止まり基調であり,更に平成24年11月中旬以降は,為替相場が円安に進展した影響で飼料価格の慢性的な高騰が続いています。
 一方で,水田を活用した飼料用米の生産は,米価の下落や直接払交付金(経営安定対策等)による助成により,作付面積が拡大しています。
 県内の平成26年産飼料用米の作付面積は,約2,500haとなっており,今後とも拡大が期待されます。
 生産された飼料用米の半数以上が,飼料メーカーへ出荷されているなかで,春以降の暖かい時期の保管場所確保や配合飼料の農家購入価格が下がらないこと等が課題です。


 飼料用米ソフトグレインサイレージとは  
 飼料用米ソフトグレインサイレージ(以下,飼料用米SGS)とは,収穫した飼料用米を乾燥せずに密閉保存して,サイレージ化したものです。
 サイレージ調製をする前に,原料である飼料用米を粉砕や圧ぺん処理を行うことで,消化率と発酵品質が向上します。
 原料となる飼料用米の収穫適期は,黄熟期以降となりますが,収穫からサイレージ調製を開始する期間の保存を考慮すると完熟期で収穫される事例が全国的に多くみられます。


 飼料用米SGSのメリット・デメリット
【メリット】
・原料(飼料用米)の乾燥調製が不要です。
・常温で長期保存が可能です。(保冷庫が不要)
・農産物検査規格に基づく検査が不要です。
【デメリット】
・サイレージ調製の作業が必要です。
・飼料用米SGSは,原料がモミ米であることから牛中心の飼料となります。(豚の場合は,玄米をサイレージ化した玄米サイレージの方が適しています。)
  なお,飼料用米SGSは,経営安定対策の助成単価が収量に関係なく面積助成の8万円/10a※1となります。(※1:基準収量を著しく下回る場合を除く)


 飼料用米SGSの原料(モミ米)の処理方法
 処理方法には,大きく分けて,「粉砕・破砕」と「蒸気圧ぺん」の2つがあります。
 粉砕・破砕には,粉砕機や破砕機を使い,蒸気圧ぺんには,籾殻圧縮膨潤化装置(プレスパンダー)が必要です。
 粉砕機や破砕機は,価格が約十万円〜数百万円と広くありますので,処理能力や条件等に合わせて,機械を導入できます。
 籾殻圧縮膨潤化装置とは,高圧・高温の水蒸気で加温・加湿した後に圧砕する装置です。価格が1600万円〜2300万円位/台と高いため,ライスセンター等に導入されている事例があれば,汎用を検討すると良いでしょう。


 サイレージ調製について
 サイレージ調製にあたっては,以下のポイントに留意して調製します。(図1作業工程を参照)
・原料(モミ米)の粒度は,出来るだけ細かく粉砕します。(目標2mm以下)
・サイロは,内袋付きのフレコンバックやドラム缶サイロ等を用い,飼料給与時の作業性や開封後の2次発酵を考慮して,大きさを選択します。(数日間で使い切る量が目安です。)
・加水処理は,原料の水分を穀粒水分計等で測り,サイレージ調製後の水分が30〜35%程度になるように調整します。加水時にホモ型乳酸菌製剤(畜草1号プラス※2など)を添加すると発酵品質の改善につながります。
・密封は,出来るだけサイロ内に空気が残らないように原料を詰め込み,内袋がある場合は,掃除機等で脱気し,ヒモや結束バンドで密封します。※3
・発酵期間(出来上がるまでの期間)は,気温により異なります。調製時期が冬場になるため,約2か月間を目安とし,その後に給与を開始します。
※2 畜草1号プラスとは(独)畜産草地研究所で分離・選抜し,埼玉県と雪印種苗(株)で共同開発した乳酸菌です。
※3 密封して数日間は,ガスが発生することがあるので,必要に応じてガス抜きを行い,再度,脱気して密封します。


 飼料用米SGSの給与について
 飼料用米の給与については,農林水産省HP(飼料用米の利用に関するQ&A)では,「乳用牛の場合,配合飼料の10%程度までであれば,家畜の生理や生産物に影響を与えることなく置き換えることができる」とされています。
 現在,繁殖和牛へ飼料用米SGSを飼料全体の5%程度代替して給与試験をしています。ルーメンアシドーシスなどの疾病発生はなく,特に問題はありません。今後は,給与量を増やしたり,給与した繁殖和牛の繁殖成績等を調査する予定です。結果が出ましたら報告したいと思います。