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鹿行地域におけるオーエスキー病(AD)清浄化への歩み
茨城県鹿行家畜保健衛生所


 鹿行管内は,5市ある内の4市(神栖市,鹿嶋市,行方市,鉾田市)で豚が飼養され,そのうちの行方市と鉾田市では飼養頭数3,000頭以上の大規模農場や養豚農家が密集している地域が含まれています。そのような中で平成19年に鉾田市の養豚組合を中心としたAD清浄化への取り組みが始まりました。当初は農場の現状を把握するために聞き取り調査とAD抗体検査を行い,各農場にあったADワクチンの接種プログラムなどの清浄化対策を立て,生産者との検討会を通して情報の共有化を図ってきました。


 新たなAD防疫対策要領でのスタート
 これまでのADワクチン接種を柱とした清浄化対策では,近隣にAD陽性農場がある場合,ADウイルスの侵入を繰り返してしまい清浄化達成には至りませんでした。そのため,平成20年12月からAD防疫対策要領が改定され,検査結果によって振り分けた同じ清浄化段階の農場を地域単位でステータスTからWに分け,地域ぐるみで清浄化を目指す取り組みがスタートしました。AD検査はそれまでと畜場の出荷豚で行っていたのを改め,各農場でステージ毎の採血に努めてきました。その結果ADワクチンを全頭接種している農場でも,不適切な接種時期や接種漏れによって肥育豚でワクチン抗体が保有されていなかったり,過去にADが農場内で流行して感染した繁殖豚が潜んでいるケースなどが認められました。また,繁殖豚を自家育成しているAD陽性農場では,育成段階でウイルス感染してしまった候補豚を繁殖に供し,AD清浄化を妨げている要因となっているなど,各農場の実態が明らかになり,農場に適した改善指導を行ってきました。


 AD清浄化への兆し  
 このような状況においても,毎年のAD検査を繰り返し行った結果,頭数ベースでは順調にAD陽性豚の減少傾向がみられました。特に平成23年度(第3期)には,肥育豚のAD陽性率が清浄化対策を開始した当初20%と比較して半減していました。これは鉾田市の養豚組合を中心とした取り組みが,管内の養豚農家へ波及してADワクチン接種の徹底に繋がり数値として現れてきました。しかし,戸数ベースでのAD陽性率は横ばい傾向でした。その要因としては,畜主の気づかない間に農場内でADが流行していたり,未検査のAD陽性豚を導入してしまったと考えられました。









 新たな対策
 平成24年度からの取り組みとして@肥育豚ではAD陰性であることA繁殖豚がこれまでの抽出検査で農場の更新率以下であることBAD陰性豚を導入していることなどの条件に適合する農場に対し,国で実施しているAD感染豚のとう汰促進事業を活用してAD陽性豚の摘発および淘汰を実施しました。この取り組みにより,行方市では繁殖豚にAD陽性豚がいる農場が数戸残るまでに清浄化が進みました。清浄化を達成した農場の生産者の方に話を聞くと,AD陽性豚がいなくなったことで他の疾病もなくなり,衛生費の削減に繋がった,発育が良くなり出荷が早くなったなど飼料代が削減され,経済効果が見られたという声も聞かれるようになりました。また,繁殖豚の採血はストレスの軽減を考慮した無保定による尾根部採血を取り入れて繁殖豚にかかるストレスなどの軽減化を図っています。一方で尾根部採血は,保定をせずに女性一人でも安全に採血をすることが可能になり,検査の効率アップに繋がりました。




 大規模農場AD清浄化への挑戦
 国が設定した清浄化までのタイムリミットも残りわずかとなった平成25年度からは,AD陽性の大規模農場の清浄化対策について取り組みを始めました。定期的なモニタリング検査による農場内の状況把握に加え,繁殖候補豚の検査を毎月実施し,AD陰性が確認された候補豚のみを繁殖豚に供することで肥育豚の陰転化や繁殖豚の陽性率の低下を確認しています。そして最終的には統計学的な手法による検査で陰性を確認していきたいと考えています。




 今後の展開
 今年度の上半期は昨年から全国的に発生した豚流行性下痢(PED)の影響で農場での検査が計画通りに進みませんでした。PEDの発生が落ち着いてきた現在は,遅れを取り戻すためペースアップして検査を進めています。国の方針はAD野外抗体およびワクチン抗体を無くし,平成27年度までにAD清浄化を達成する計画を公表しています。しかし,管内においては,肥育豚で未だAD陽性抗体が確認されているため,清浄化が達成された農場から順次ワクチン接種を中止しても再感染のリスクが非常に高いと思われます。先日,管内の養豚生産者を対象に行ったアンケート調査の結果,ほとんどの生産者の方々は将来的にワクチン接種の中止を望んでいましたが,その前に地域でのAD清浄化を前提条件として上げています。 そのためには残された時間で何をしていけば良いか,現状に合った清浄化を達成するための対策を検討し,今後もAD清浄化への取り組みを継続していきたいと思います。