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家畜ふん堆肥の速効性肥料効果の解明と実用化技術の開発
茨城県畜産センター 生産技術研究室


 はじめに
 家畜ふん堆肥中には比較的多くの肥料成分が含まれているため,土作り資材というだけでなく,化学肥料の代替としてもその利用が進められています。しかし,堆肥中の肥料成分の効き方は堆肥ごとに異るため,栽培期間中に肥効が現れないケースなどもあり,耕種農家にとって使いにくい一因となっています。
 そこで,当研究室では堆肥中の肥料成分のうち窒素に関して,すぐに効いてくる部分(速効性肥料効果)の,畜種ごとの特徴と簡易な分析方法について検討したので,その内容について紹介します。


 堆肥中の窒素  
 家畜ふん堆肥中には平均で,牛ふん堆肥で10〜20kg/t,豚,鶏ふんで20〜30kg/tの窒素が含まれています。しかし,この全ての窒素がすぐに利用されるわけではありません。全窒素のうち植物が吸収できる無機態窒素が,全窒素中に占める割合は10〜60%と非常に幅が大きく,同じ畜種でも製造方法や腐熟度によって,その含有率は異なっています。
 また,窒素は施肥後も土壌等の影響を受け,形を変えていくという特徴があります。有機態から無機態窒素の形になることを無機化,その逆に土壌中の微生物に取り込まれることを有機化といいますが,堆肥によってそのパターンが異なることが知られています。
 当室で行った試験結果でも図1のように4つのパターンに大きく分けられることが確認され,同じ畜種でも製造方法や腐熟度によってパターンが異なっていることが分かりました。






 一見多くの窒素を含んでいるように見えても,Dパターンのような堆肥の場合,栽培期間中に全く肥効が現れないという問題が生じることがあります。
 今回の試験では,密閉縦型強制発酵施設で堆肥化した場合にCやDのパターンをとるケースが多いことが確認されました。


 速効性成分の簡易測定法
 使いたい堆肥の無機化パターンを把握するには、実際に堆肥を土に混ぜて培養を行う必要がありますが,現場で行うことは不可能です。そこで,当室では,基肥分に使える成分(速効性部分)を迅速に測定できる簡易分析法を検討しています。




 簡易分析は,発芽試験等による堆肥の腐熟度判定と組み合わせて行います。堆肥を2%クエン酸溶液で抽出し,市販の簡易キット等を用いて簡単に測定することができます。同じ抽出液で,窒素・リン酸・カリの3成分の測定が可能であり,省力化も期待できます。
 また,本県では堆肥施用にあたり施肥設計システム「たい肥ナビ!」を公開していますが,今回の試験結果で得られた知見を基に,簡易測定法により得られた速効性成分値を用いた施肥設計方法をたい肥ナビに盛り込み,平成27年4月から運用する予定です。これまでは,現物中成分割合と肥効率を用いて計算していましたが,個々の堆肥の速効性成分値を入力できる仕組みを追加し,より正確な堆肥施肥量が算出できるようになります。