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シンバイオティクスを利用した哺乳期の黒毛和種子牛の管理技術の確立
茨城県畜産センター肉用牛研究所


 哺乳期の子牛は,温度・環境の変化や病原菌などにより,下痢を発症することが多く,特に黒毛和種はホルスタイン種に比べ発生しやすい と言われています。また,哺乳期の下痢による発育停滞は,繁殖農家の経済的損失に繋がります。
 ホルスタイン種での研究では,代用乳にシンバイオティクス(*)を添加することで,腸内の乳酸菌が増加し,下痢症の予防効果が確認されています。
 そこで当所では,黒毛和種子牛の下痢を予防することにより損耗防止,発育向上による育成期間の短縮を目的に試験を実施しています。試験は実施中ですが途中経過をお知らせします。

 試験方法
 黒毛和種子牛では代用乳給与はまれなため,制限哺乳することで,哺乳意欲を高め,これを利用しシンバイオティクスを給与しました。哺 乳回数は,朝夕の2回とし,1回の哺乳時間は15分としました。哺乳後,シンバイオティクス10gをお湯で溶かし,哺乳瓶で給与しました。供試頭数は22頭(試験区13頭,対照区9頭)で,生後6日齢まで馴致期間とし,シンバイオティクスの味と哺乳瓶になれさせました。生後7日齢から3ヶ月齢まで試験を行いました。


 試験結果
1 発育成績
 1日当たりの増体量は試験区が0.82kg/日,対照区が0.89kg/日となり,有意な差は見られませんでした。
2 下痢の発生回数
 下痢の発生回数は,試験区3.8回,対照区5.3回で,試験区が少なくなりました。
3 下痢の発生日数
 下痢の発生日数は試験区が6.9日,対照区が9.1日と試験区で少なくなりました。図1,図2に四半期毎の発生日数と月齢別発生日数を示しましたが,ともに試験区で少なくなりました。



図1 四半期毎下痢発生日数

図2 月齢別下痢発生日数


4 糞便中の細菌数
 大腸菌群数は,試験区が少なく推移しました。乳酸菌群数は,試験区と対照区とも同じような推移を示しました。



図3 大腸菌群数

図4 乳酸菌群数


 まとめ
 以上の結果から,シンバイオティクスの給与により発育成績には差は認められないものの,下痢の発生回数及び日数が減る傾向にありました。これにより,下痢の予防に効果があることが示唆されました。
 本年度も試験継続中ですので,今後とりまとめてお知らせしたいと考えています。
*語句説明
 シンバイオティクスとは,胃で分解されずに腸内まで届き,特定の有用細菌に選択的に作用する食物成分(プロバイオテイクス)と,生きたまま腸内に届く乳酸菌等の善玉菌(プレバイオテイクス)をあわせたもの