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豚舎汚水からのリン回収技術についての研究
茨城県畜産センター 生産技術研究室

 はじめに
 豚舎汚水中には高濃度のリンが含まれており,放流する際にはリンの除去が必要です。これを解決する技術の一つとして,汚水をアルカリ性にして汚水中に溶解しているリンをリン酸マグネシウムアンモニウム結晶化( MAP :Magnesium Ammonium Phosphate)し,汚水から回収する技術があります。MAPは,枯渇が懸念されるリン資源としての活用が期待されている一方,回収の効率性が伴わず回収量が少ないという課題があります。
 そこで,豚舎汚水からのMAP回収量と回収率の向上を図るため,実証用MAP回収施設を設置(図1)し,回収用部材の形状の違いが回収量に及ぼす影響について試験を実施したので結果を紹介します。



図1 設置箇所概略


 試験方法
 ふん尿混合汚水を処理する養豚場の豚舎汚水処理施設に実証用MAP回収施設(処理量3m3/日)を設置して試験を行いました。MAP回収用部材として,同程度の表面積になるよう調整したステンレス素材の円筒状に丸めた網(高さ40cm,直径19cm)と板状の網(縦87cm,横39cm)(図2)をMAP回収施設にそれぞれ68日間浸漬させて,両者のMAP回収量を比較しました。


 試験結果
 MAP回収量は板状の網が9.9kg(回収率約6割に相当)で,円筒状に丸めた網の1.5kgよりも多く回収できました。この理由として,ふん尿混合汚水には豚毛等が多いため,円筒状に丸めた網では挟雑物が多く網に絡まり,MAP結晶の部材への付着が阻害されたのに対し,板状の網ではその影響が少ないことが考えられます。



図2 円筒状に丸めた網(左)と板状の網(右)


 おわりに
 今回の試験では,MAPを付着させる部材の形状を変えることで,豚舎汚水中のリンをより多く回収することができました。今後は,さらに多くのMAPを回収する方法や,回収したMAP(図3)を肥料として有効利用する方法を検討していく予定です。



図3 豚舎汚水から回収したMAP結晶
(豚毛が多く見受けられる)