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TDN含量が高い早生系イタリアンライグラス「友系31号」
茨城県畜産センター飼養技術研究室

 はじめに
  畜産センターでは単位面積当たりの収量,耐倒伏性及び抗病性に優れたイタリアンライグラスなど牧草の優良品種の育成やトウモロコシ,混播栽培に適したソルガムなどの飼料作物の品種選定を研究目標に定め,それらの普及による飼料自給率の向上を目指しています。具体的には牧草では耐倒伏性・抗病性に優れた品種の育種や,県内の気候に適した多収,耐倒伏性等のトウモロコシ品種の選定試験を行っています。
 牧草のうちイタリアンライグラスの育種はこれまでは反収や耐倒伏性の向上に主眼をおいてきましたが,近年は乳牛の高能力化に伴いより栄養価の高い良質な粗飼料が求められるようになり,改良したい特性の一つとして現在消化性が注目されています。理由は栽培面積と反収が同じであれば,TDN含量を高めることにより購入飼料で補うTDN量を削減でき,限られた餌の摂取量をより有効に利用できるからです。今回は当センターが中心となって育成した消化性が良くTDN含量が高い早生系イタリアンライグラス「友系31号」について紹介します。

 「友系31号」の育成経過
  高消化性イタリアンライグラス系統については平成16年から育成を開始しました。具体的には,市販早生品種を材料として,その個体の中でOb(低消化性繊維)の低いものを選抜しました。その後,低Obによる選抜を2回繰り返し,得られた系統の生産力を検定し,低Obで推定TDN含量,推定TDN収量が高く倒伏程度の低い3母系を選定,種子を等量混合して「友系31号」(写真1)としました。



写真1「友系31号」の草姿

 「友系31号」のTDN含量
  「友系31号」の推定TDN含量は図に示したように,1,2番草ともに,「はたあおば」や「タチワセ」と比較してTDNが高い結果でした。「友系31号」は他の早生品種との比較でも,また出穂前から開花期のどの生育ステージにおいても高いTDN含量を示しています。
 「友系31号」のTDN含量が高い理由として,細胞内容物(水溶性もしくは蛋白分解酵素で分解される部分)含量,その中でも可溶性炭水化物含量が高いことがあげられます。収穫した草が乳酸発酵に適した水分条件ではサイレージ調製しても「友系31号」の高TDN特性が維持されること,また高水分で乳酸発酵に不適な条件下では草中の細胞内容物含量が高いほど発酵品質が良いことがパウチ法(真空パック)を用いた試験で確認されています。



 「友系31号」のその他の特性
  「友系31号」の出穂始日は「はたあおば」や「タチワセ」など,他の早生品種と同程度です。本県では4月末〜5月始めに刈取適期(出穂期)になります。「友系31号」の倒伏程度は「はたあおば」より高いですが,タチワセよりは低く,実用的な耐倒伏性を備えています。「友系31 号」の1,2番草の合計乾物収量は「はたあおば」より多収となっています(表)。この理由として,「友系31号」が1,2 番草ともに高TDN であることと,1 番草刈取後の再生に優れ,2番草が多収であることがあげられます。



 実用化に向けて
  普及に向けた現地(写真2)実証試験成績などから,イタリアンライグラスを従来から栽培している農場でTDN収量の向上が期待されます。栽培法は他のイタリアンライグラス早生品種に準じます。
 なお「友系31号」は平成26年度の品種登録出願を目指して準備を進めています。