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飼料用米の給与が黒毛和種の肥育成績に及ぼす影響
茨城県畜産センター肉用牛研究所


 1.はじめに

   近年,輸入依存の飼料を国産飼料に代替するべく検討が重ねられています。牛の飼養においても濃厚飼料中のトウモロコシを飼料用米で代替する研究がなされていますが,肥育では増体が劣る,発酵しやすくルーメンアシドーシスになりやすいなど問題が挙げられています。また,近年の改良された黒毛和種において,特に玄米での給与成果の報告が乏しい状況です。そこで黒毛和種肥育牛における適切な飼料用米給与水準や,ルーメンアシドーシスの発生する給与量,肉質に及ぼす影響について明らかにし,飼料用米の給与技術を確立するため試験を行いました。


 2.材料及び方法
  試験牛は,9ヶ月齢の黒毛和種去勢牛9頭を市場導入し,種雄牛は同一としました。導入後2ヶ月間は飼料米への馴致期間としました。試験期間は,11〜29ヶ月齢とし,11〜19ヶ月齢までを前期,20〜29ヶ月齢までを後期としました。試験区には,一般配合飼料を粉砕した飼料用米(玄米)で重量比30%及び15%代替し,それぞれ,30%区(3頭)及び15%区(3頭)としました。また,対照区(3頭)には一般配合飼料を用いました。飼料は1日2回給与し,飽食としました。粗飼料は,試験区及び対照区ともに5cmに細断した稲ワラを配合飼料と混合し給与しました。配合飼料と稲ワラの混合比率は前期では80:20,後期では92:8としました。各区の給与飼料の飼料成分を表1に示しました。
 試験牛は全頭を1群管理とし,飼料給与は自動開閉ドアによる個体給与としました。敷料はオガクズを使用し,飲水はウォータカップでの自由飲水,固形塩(尿石予防薬含有)は自由舐食としました。なお,前期飼料から後期飼料への切り替え時には4週間の馴致期間を設け,徐々に後期飼料へ移行させました。なお,対照区の1頭が斃死したため試験結果から除外しました。



 3.結果と考察
   発育成績は,試験期間を通し両試験区が対照区を下回っていました。15%区では,生後14ヶ月齢まで対照区と同等でしたが,その後,増体が鈍くなりました。胸囲も同様の傾向でした。体高は両試験区,対照区とも同程度でした。1日平均増体重(表2)は両試験区ともに0.80sであり,代替割合による差はありませんでした。対照区は0.94sであり,両試験区より良好でした。
 飼料中の粗タンパク質は,表1に示すとおり30%区が13.9%,15%区が15.2%,対照区が16.5%でした。今回対照区の発育が良かったのは,飼料中の粗タンパクが多いためと考えられます。そのため,飼料米を配合飼料の代替利用をする場合は,大豆粕等で給与飼料のタンパク質の補正が必要になると思われます。
 肥育期間の1日あたりの飼料摂取量は,両試験区で対照区より少なくなりました(表2)。飼料要求率は,両試験区で対照区より高くなる傾向にありました(表2)。


 試験期間中,胃液のpHはルーメンアシドーシスの目安とされるpH5以下に変動することなく,また,採食後の乳酸も正常値( 90mg/L 以下)で推移しました(図1)。各血液性状に著しい異常はなく,肥育全期間を通して健康状態に異常はありませんでした。このことから粉砕した飼料用米(玄米)を重量比で配合飼料の30%代替し牛に給与しても健康上の問題はないと考えられました。


 枝肉成績(表3)は,枝肉重量は対照区が重く,ばらの厚さは対照区が厚くなりました。その他に大きな差はありませんでした。


 脂肪酸組成を表4に示しました。脂肪酸組成において,両試験区ともに対照区に比べて不飽和脂肪酸が多くなりました。このことは,脂肪融点は低くなる傾向になります。また,牛肉の薫りやおいしさに影響を及ぼすとされるオレイン酸(C18 : 1)は試験区の方が対照区より多い傾向にありました。そのため,飼料用米を給与することにより,肉の風味を向上させる可能性があると考えられます。
 アミノ酸組成を表5に示しました。旨味に関するアミノ酸であるグルタミン酸,アスパラギン酸,タウリンに差はありませんでした。
 せん断力は,30 %区で13 . 0 kgw,15 %区で11 . 1 kgw,対照区で14 . 4 kgw となりました。対照区に比べて試験区が低く,肉質は柔らかくなると考えられます。



 4.さいごに
   飼料用米(玄米・粉砕)を配合飼料の重量比で30%まで代替しても肥育牛の健康に問題はありませんでした。また,肉質は柔らかくなると 考えられます。このため,飼料用米は肥育期間全体を通じて配合飼料の一部代替給与が可能でありますが,給与に当たっては,飼料用米への十分な馴致,不足する養分(タンパク質)の補給が留意点として考えられます。