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     平成23年度 > 1月号 : 「常陸牛」に関する平成23年の 情勢及び新たな取り組みについて


「常陸牛」に関する平成23年の 情勢及び新たな取り組みについて
茨城県畜産農業協同組合連合会


  本県の銘柄牛である「常陸牛」にとっても、ここ 数年間は飼料穀物相場の高騰・枝肉相場の長期 低迷・口蹄疫の発生等と厳しい状況が連続してお りました。その回復が期待された平成23年は、3月 に発生した東日本大震災・自粛ムードによる景気 の低迷・福島原発事故に端を発する放射能問題や 風評被害・ユッケ食中毒事件・安愚楽牧場の経営 破綻等、さらに追い打ちをかけるような重大な事 件が次々に起きるといった、まさに最悪の年であっ たように思われます。特に放射能汚染稲わらの給 与により福島県産の牛肉から放射能が検出された 問題においては、隣接している本県も同様の扱い を受け大きなダメージとなりました。県内の生産3 団体(本会・全農いばらき・県家畜商協)では3月以 降、県や関係団体とともに定期的に情報交換や協 議を行いながら、一致団結して各種問題の対応に あたりました。その結果として、7月には県内全ての 肉牛生産者に対する稲わら調査を実施し、8月から は全国に先駆け放射能検査体制が整備され、東 京電力に対する損害賠償もいち早く補償が支払わ れる等、他県の見本となるスピード感ある対応策 が図れました。今後も、県内肉牛生産者を守ること を最大の目的として、団体間の連携強化を図りたい と考えております。




枝肉セリ風景


  本会では常陸牛のブランドアップや生産技術の 向上を目的に、東京食肉市場において定期的に枝 肉研究会を開催しておりますが、平成23年はその 影響が販売金額に顕著に表れた年でありました。 平成22年度までの研究会では常に平均100万円前 後と安定した販売金額でおりましたが、平成23年 4月以降は平均販売金額で10〜20万円安の取引と なりました。肉質的には例年どおり高レベルの牛 が揃っていましたが、販売価格のみ低下したこと は、まさに放射能による被害といえます。しかし、 そのような中でも23年秋以降は、最高の肉質を誇 るチャンピオン牛(名誉賞・最優秀賞)が枝肉単 価3,000円超(販売価格150万円超)と、前年以上か つ他銘柄牛をも上回る価格での取引が続き、僅か ではありますが希望の光が差し込んでまいりまし た。
 また本会では、常陸牛の新たな差別化を図る前 段として、東京食肉市場において「食肉脂質測定 装置」による「オレイン酸」等の測定作業を開始し ました。




牛枝肉 測定部位 筋間脂肪


  肉質に関する従来の指標は、 霜降り重視の枝肉格付が中心と なっておりますが、最近では脂肪 の質が重要視されてきておりま す。今年10月には「全国和牛能力 共進会」が長崎県にて開催され ますが、そこでも同じ測定装置を 使って脂肪の測定を行い、その結 果が審査に加味される予定です。 本会でも、4月から飼料メーカーの 協力によって脂肪の測定作業が 行えるようになり、10回の枝肉研 究会で計400頭に対しオレイン酸 や不飽和脂肪酸等の計測を行いました。当初は東 京食肉市場でも初めての試みであったため、装置 を持ち込んでの作業に苦労しましたが、現在では 全国肉用牛振興基金協会や日本食肉格付協会で も同じ機械を使った試験が始まったと聞いており ます。装置による測定では、と畜後の経過時間や 冷蔵庫内の温度設定により数値の誤差が生じ、そ れを修正する作業(検量線の作成)が重要になるた め、現在の計測データはその調整段階であり参考 の数値でしかありません。しかし、測定結果を見る と、枝肉によってオレイン酸等に違いがあることは 明確であります。今後は、この計測数やサンプル採 取による分析の実測数を増やすことにより、美味し さの数値価が瞬時にできる可能性もあります。将 来的には、この装置を活用して美味しさの情報開 示を行ったり、本会が特許を取得している「米油製 剤」を活用し「オレイン酸」を高め他銘柄との差別 化につなげる等、常に生産者の収益につながるこ とを念頭において一歩進んだ取り組みを行ってい きたいと考えております。




米油製剤