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     平成23年度 > 1月号 : 鶏の体温と運動量を常時測定できる センサシステムの確立


鶏の体温と運動量を常時測定できるセンサシステムの確立
茨城県畜産センター養鶏研究室


1 目的

 高病原性鳥インフルエンザをはじめ、家畜疾病 の発生は、養鶏経営に大きな被害をもたらしま す。こうしたことから、畜産センターでは(独)産 業技術総合研究所等と共同して、鶏の体温や動 きをリアルタイムで観察できる無線センサを開発 し、鶏の疾病を早期に発見するシステムの確立を 目指して試験を行っています。
 また、このセンサのデータを日常の飼養管理に 活用して、暑熱期の生産性低下を防止する飼養管 理技術を確立することを目的としています。



2 役割分担

 センサ及びセンサシステムの開発は、(独)産 業技術総合研究所が行い、畜産センターは、セン サを鶏に装着し、耐久性や稼動性などの実証試 験を行っています。



3 システムの概要(イメージ)




4 試験方法

(1)供試鶏、鶏舎、試験期間
 通常環境鶏舎を対照区、ミスト噴霧及び送風 機設置した鶏舎を細霧区としました。(ミスト噴 霧は自動タイマにより午前10時から午後3時まで の間、5分間隔で稼働させ、送風は午前8時30分 から16時30分まで連続稼働させました)、各区と も卵用種10羽で試験を行いました。
 試験期間は、暑熱の厳しい7月〜9月の3ヶ月 間に行いました。

(2)センサ
 センサは、リチウム電池を利用した直径約1.5c m、約3gで、連続的に鶏の体温と加速度の測定 を行し、鶏舎内に設置したパソコン内にデータが 蓄積される仕組みとなっています。

(3)調査項目
 @センサの耐久性、A環境温度、B体温・運 動量、C産卵成績、D飼料消費量、E体重を測定 しました。



5 試験結果

(1)センサの装着方法、耐久性について
 翼章を加工し、センサを鶏の上腕部に装着させ たところ脱落することなく安定的に測定できまし た。平均稼働日数(電池の消耗)は、81日間でし た。

(2)鶏舎へのミスト・送風効果
 鶏舎内の気温は、ミスト鶏舎と通常鶏舎で有 意差は認められませんでしたが、細霧鶏舎の鶏 の体温は、通常鶏舎に比べ低く推移しました。

(3)鶏舎環境と生産性(飼料消費量、卵重、産卵 率)との関係
 有意差は無かったものの、暑熱に厳しい時期 においてもミスト鶏舎で は、通常鶏舎に比較して飼 料消費量が低下せず、平均 重量が大きい鶏卵が生産 でき、鶏舎内へのミスト噴 霧及び送風機の設置は暑 熱による生産性低下防止 効果がありました。





6 期待される効果

(1)本システムにより、鳥インフルエンザ等による鶏の発熱や、運動量 の低下を早期に発見する ことが可能となり、鶏疾病の拡大を防止で きます。

(2)夏季にミスト散布と送風機を稼動させる飼養管理対策を行うこと で、暑熱ストレスが低減にされ、生産性の低下が防止できます。