平成22年度 平成21年度 平成20年度 平成19年度 平成18年度 平成17年度 平成16年度〜

     平成23年度 > 1月号 : 家畜伝染病予防法の一部を改正する 法律のポイント


家畜伝染病予防法の一部を改正する 法律のポイント
鹿行家畜保健衛生所 前田育子


 昨年4月に発生した宮崎県の口蹄疫、11月以降 の高病原性鳥インフルエンザの発生状況を踏ま え、家畜伝染病の「発生の予防」、「早期の発見・ 通報」及び「迅速・的確な初動対応」に重点を置 いた防疫対応を強化する観点から、本年4月に家 畜伝染病予防法(「以下、家伝法」という)が改正 されました。このうち、「発生の予防」を実効あるも のにするため、家伝法第12条の3に規定されている 飼養衛生管理基準についても大きく見直されまし た。 
 今回の家伝法の改正で、7月からは、予防的殺処 分、消毒ポイントを通過する車両等の消毒義務、 財政支援の強化等が、10月からは、わが国へのウ イルス侵入防止措置として家畜防疫官による入国 者に対する質問等の権限の付与、家畜の所有者に 対しては、消毒設備の設置や飼養衛生管理状況の 報告、さらには一定症状(特定症状)を呈する家畜 を確認した時の家畜保健衛生所への通報が義務 付けられました。
 ここでは、特に家畜の所有者の方々に大きく関 係する家伝法の改正のポイントついて記載しま す。



【改正のポイント1】

畜産農家のウイルス侵入防止措置 のあり方

 家畜の所有者は、家畜伝染病の発生を予防し、 まん延を防止することに重要な責任を有しているこ とを自覚して、消毒その他の措置を適切に実施し なければなりません。家畜の所有者には消毒設備 の設置が義務付けられ、畜舎等に入る者の身体、 物品及び車両の消毒を徹底しなければなりませ ん。
 そして、家畜の所有者に都道府県知事への家畜 の飼養衛生管理状況の報告を義務付け、飼養衛 生管理基準*が遵守されていない場合、都道府県 知事は指導・助言、勧告又は命令を段階的に行っ ていきます。


*飼養衛生管理基準とは…?

 飼養衛生管理基準は、家畜の飼養に必要な衛生管理の方法について、家畜の所有者及び管理者が 遵守しなければならない基準のことです。
 今回の見直しで、@農場を衛生管理区域とそれ以外の区域とに分け、境界が分かるようにし、出入り 口に消毒設備を設けること。A埋却地の準備をしておくこと。B感染ルート等の早期特定のための記 録簿の作成と保存をしておくこと。C毎日家畜の健康観察を行い、特定症状を呈している家畜を確認 したときは家畜保健衛生所へ通報すること等が盛り込まれました。



【改正のポイント2】

発生に備えた準備のあり方

 飼養衛生管理基準の中に埋却地の確保が規定 されました。



【改正のポイント3】

患畜の早期の発見・通報のあり方

 家畜の所有者は患畜・疑似患畜の届出とは別 に、農林水産大臣の定める後述の特定症状を呈し ている家畜を発見した場合は家畜保健衛生所に 通報しなければなりません。


→口蹄疫の特定症状
(牛、豚、いのしし、めん羊、山羊、水牛)
・39℃以上の発熱、泡沫性流涎(よだれ)、跛 行、起立不能
・泌乳量の大幅な低下又は泌乳停止
・口腔内、口唇、鼻部、蹄部、乳頭及び乳房に 水疱やびらん、潰瘍・同一の畜房内に複数の家畜の口腔内等に水 疱、
・同一の畜房内において、当日及び前日の 2日間に半数以上の哺乳畜が死亡。




→高病原性鳥インフルエンザの特定症状
 (鶏、あひる、うずら、きじ、だちょう、ほ ろほろ鳥、七面鳥)
・同一の家きん舎内で、1日の家きんの死亡率 が、当日から遡って21日間における平均の家 きんの死亡率の2倍以上になった場合。
・民間獣医師等が行った簡易検査キットを用い た抗原検査やELISAを用いた血清抗体検査に より陽性となった場合。






【改正のポイント4】

国の財政支援のあり方

 口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ等の患 畜又は疑似患畜には特別手当金が交付され、通 常の手当金とあわせて評価額全額が交付されま す。しかし、家畜伝染病の発生またはまん延を 防止するために必要な措置(飼養衛生管理の状 況、早期通報の実施状況、まん延防止への協 力)をしなかった者に対しては手当金の全額又 は一部が交付されません。



【改正のポイント5】

患畜及び疑似患畜以外の家畜の殺処分等

 口蹄疫のまん延防止のための最終手段とし て、患畜・疑似患畜以外の家畜の予防的殺処分 を行った場合、国は対象農場に対し補償を行い ます。
 最後に、家畜の所有者の方々は、家畜保健 衛生所から提供される情報を必ず確認していた だき、自らが飼養する家畜の伝染病の発生状況 や各種情報を把握するとともに、家畜保健衛生 所や関係団体等が開催する講習会への積極的な 参加、農林水産省のホームページの閲覧を通じ て、家畜防疫に関する情報を積極的に把握して 下さい。
 さらに、病気を持ち込まない、広げないため の心がけとして、個々の農場だけでなく、農場 に出入りする関係者の一人一人が家畜伝染病の 侵入・まん延を防ぐためのご協力をよろしくお 願い致します。