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     平成23年度 > 9月号 : 和牛子牛の制限哺乳が子牛の発育 及び母牛の受胎に及ぼす影響


和牛子牛の制限哺乳が子牛の発育 及び母牛の受胎に及ぼす影響
畜産センター肉用牛研究所 平林 志野

 黒毛和種繁殖経営において、子牛出荷は重要な収入源であり、繁殖雌牛の分娩間隔が、経営に大きく影響します。本県における黒毛和種繁殖経営は、分娩間隔が14. 1ヶ月で、目標である1年1 産に届いておらず、分娩後の繁殖管理に改善すべき点があります。
 母牛の発情回帰は子牛の哺乳刺激により遅延することは一般的に知られており、黒毛和種繁殖経営では、分娩後307日で離乳する早期離乳技術や、離乳した子牛の人工哺乳技術が取り入れられています。しかし、本県では、人工哺乳によ る新たな経費・労力の増加、施設等の問題があり、導入している農家はまだ多くはありません。
 今回、従来からの省力的な母子同居飼養を行いつつ、表1に示すような効果が期待される制限哺乳の試験成果について紹介します。

表1 制限哺乳により期待される効果
要 因
効 果

子牛の哺乳
刺激の減少
母牛の発情回帰日数
の短縮
授精時期の早期化

授乳量の
減少
哺乳子牛用配合飼料
(スターター)摂取量の増加
発育向上
母子分離
下痢の減少


 今回、表2に示した方法により制限哺乳を行いました。  初年目12頭(制限哺乳6頭、自然哺乳6頭)、2年目9頭(制限哺乳4頭、自然哺乳5頭)で、分娩後7日齢から離乳時期の3ヶ月齢まで試験を行いました。


表2 試験方法
飼養管理
離乳時期
哺乳方法 哺乳時間 15 分/ 回
       哺乳回数  2 回/ 日

哺乳時間以外は子牛分離房で
飼養。スターター、乾草、
水は自由摂食
3ヶ月齢


 母牛において、分娩後初回人工授精までの平均日数は、制限哺乳区が96.6日で、自然哺乳区の135.8日よりも短くなりました。
 離乳までの平均スターター摂取量は、制限哺乳区が36.7kg/頭で、自然哺乳区の24.5kg/頭より多く、子牛の発育は、1日当たりの増体量が制限哺乳区で0.84kg、自然哺乳区で0.81kgとなり、制限哺乳区で高くなりました。
 子牛の下痢発生回数は、制限哺乳区が53回、自然哺乳区が127回と制限哺乳区で少なくなり、下痢の平均回復日数も、制限哺乳区が1. 8日、自然哺乳区が3.4日と制限哺乳区で短くなりました。
 今回の試験では、授精時期の早期化、子牛の発育向上、下痢の減少といった制限哺乳による効果が明らかとなり、黒毛和種繁殖経営に大きなメリットがあることがわかりました。