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     平成22年度 >  1月号 : 米油製剤利用による脂肪品質向上について


米油製剤利用による脂肪品質向上について
茨城県畜産農業協同組合連合会



  近年、黒毛和種は種雄牛の改良と肥育技術の改 善によって牛肉中に含まれている脂肪の割合が高 まってきており、最近は脂肪の割合が50%を超 える枝肉も珍しくありません。そうなると、従来 よりも脂肪そのもの質が求められています。脂肪 そのもの質とは、口どけの良い、体温で溶けるよ うな脂肪の融点が低い牛肉です。そこで脂肪の融 点を低くするのには、脂肪を構成している脂肪酸 の中でも、融点が低くなる不飽和脂肪酸を多く含 めば良いということになります。
  黒毛和種は非常に高いレベルの不飽和脂肪酸割 合を持つ能力の品種であることは、遺伝子レベル の研究からわかってきています。また、給与する 穀物により体脂肪酸組成が変化することも今まで の研究で確認されています。
  今回の試験は生米糠から抽出されたもので生米 糠中に20%程度含まれている米油に注目しまし た。生米糠は夏場に酸化変敗しやく、米油は液状 であるため給与することが困難です。そこで米油 製造メーカーにおいて、原料としてシリカに米油 を1:1の割合で吸着させたものを製剤化するこ とができました(写真1)。その保存性は約6ヶ 月間と非常に安定したものになりました。

@試験方法 茨城県畜連・米平公共育成牧場で飼 養している黒毛和種去勢牛の出荷前82 〜 396日 間の期間に米油製剤を1日1頭当たり85g給与し た試験区と170g給与した試験区、米油製剤を給 与していていない対照区で行いました。A試験結 果 脂肪酸組成については、表1にまとめました。 この結果からは、米油製剤給与により不飽和脂肪 酸である「オレイン酸」「リノール酸」「リノレイ ン酸」が高まり、逆に融点が高くなる飽和脂肪酸 「ミスチリン酸」「ステアリン酸」については割合 が下がっています。枝肉成績については、米油製 剤給与によって大きな差はありませんでしたが、 170g給与によってBMSが高まった結果になっ ています。この結果について予期していないこと だったので理由はよくわからないのですが、血液 中の脂肪酸量が増えたことが影響を与えた可能性 もありそうです。


写真1 米油製剤


  今回の試験では、比較的サンプリングしやすい 腎周囲脂肪から採取したものを分析に用いました。 一般的に体表面に近い部位の皮下脂肪では不飽和 脂肪酸割合が高く、体内ほど飽和脂肪酸割合が高 くなる傾向があります。今回の結果から推測する と腎周囲脂肪は不飽和脂肪酸が低い部分なのです が、その箇所で向上効果があったので、筋間やロー ス芯などはもっと高くなっている可能性がありま す。特にオレイン酸については、米油製剤給与に よって高まっており、オレイン酸含量が2%以上 の違いは食べるとわかるといわれています。この 給与技術によりオレイン酸が高まることをアピー ルできると考えてます。なお今回の試験結果によ り茨城県畜連は、特許を取得(特許第4226644号)。 第112回日本畜産学会で発表しました。
  給与する脂肪量を与えすぎて軟脂になってしま い、枝肉の価値が低下した例もありました。今回 の米油製剤給与では、このような事例から給与量 や給与期間について出来るだけ少なくて短い期間 で効果があるような給与技術の確立を目指しまし た。米油製剤給与により、「脂肪の質」を向上さ せた牛肉作りで、少しでも消費者に評価されれば と考えています。



図1 オレイン酸含有量