高病原性鳥インフルエンザ(以下:HPAI)は平成16年(山口県,大分県,京都府)の発生以降,平成17(茨城県,埼玉県),平成18年(茨城県),平成19年(宮崎県,岡山県),平成20年(愛知県)と毎年発生している状況です。また,いずれの発生についても感染経路については確定されてはいないのが現状です。
 そこで,これからHPAIの発生を最も警戒しなければならない時季を迎えるにあたり,その有効な対策の1つに野生動物等の侵入を防ぐための防鳥ネットの鶏舎への設置があります。しかしながら,小規模鶏舎で未整備のところがあるのが現況です。そこで,以前にも当紙で紹介しましたが,再度,簡易な防鳥ネットの設置事例を紹介しますので,HPAIの防疫強化を図りましょう。

(1)ケース1 (市販の防鳥ネット利用)
@農場 採卵鶏2,500羽飼養 ケージ飼い 鶏舎は約25m×4m×2m 3棟
A資材(約7万円) 果樹用防鳥ネット(7m×35m,2cm角),アニマルネット(2m×50m,2cm角),コートバンド(梱包用ビニールひも),ステイプル針(大型ホッチキスの針),塩ビパイプ
 果樹用防鳥ネットはインターネット検索し,希望サイズに裁断して農場へ配送してもらった。それ以外の資材はホームセンターで購入。
B設置の概要 (図1)
 アニマルネットは果樹用防鳥ネットと比較して野生動物の侵入防止効果が高いものの,高価で幅が狭いといった特徴があります。そこで鶏舎側面(軒下から地面)にはアニマルネットを設置し,地面に接する部分には重しとして塩ビパイプを結束し,ネットのめくり上がりを防止しました。設置以前はイタチなどによる獣害がありましたが,設置以降はなくなりました。また屋根上には換気口があり,さらに屋根と梁の間に隙間があるため,屋根全体を果樹用防鳥ネットで覆いました。ネットの鶏舎への固定は,ステイプル(大型のホッチキス)でネットを梁に固定して隙間をなくしました。設置手間は延べ3日,15名を要しました。
(2)ケース2 (防鳥ネットを漁網で代用)
@農場 採卵鶏3,500羽飼養 平飼い 鶏舎は36m×7.5m×3.5m 5棟
A資材 ネットは漁網(無償)で代用,それ以外はケース1に準じる。
B設置の概要
 既に野生動物の侵入を金網で防いでいましたが,網目が大きいため(5cm角)スズメが侵入していました。そこで金網の外側に漁業で使用しなくなった廃棄漁網(網目2cm角)を防鳥ネットとして設置しました。漁網は十分な大きさがあるため屋根の高い鶏舎でもゆったりと覆うことができます。漁網の入手は漁業協同組合と交渉しました。この方法は,水産業が盛んな本県の特色を生かした低コストでネットを設置する有効な手段と考えられます。
 鶏舎の出入口は作業性と侵入防止効果を考慮し,ネットを2重にし,中央のひもを引くと中央から左右にネットがまき上がるようにコートバンドをかけて設置しました。(出入口にカーテンレールを設置して,そこにネットを引っ掛けて開閉している例もあります。)また鶏舎南側にツル植物を植栽しネットに絡ませ,暑熱対策を行っています。設置には網加工も含め,延べ7日,14名を要しました。

 この機会に鶏舎を再点検して,破損があればすぐに修繕し,高病原性鳥インフルエンザ侵入のリスクを減らしましょう。

図1 アニマルネットと果樹用防鳥ネットを
利用して防鳥防獣対策をした鶏舎