1.はじめに
 水田の有効活用と国産飼料活用による食料自給率を向上させる取り組みとして,飼料用米の生産・利用に対する関心が高まっています。
 東茨城郡茨城町の和家養豚場では,昨年から茨城町産の飼料用米を豚に給与する取り組みを始めましたので,ご紹介します。

2.飼料用米の利用
 約3年前,和家さんは豚に米を給与することに興味を持ちました。同時期に自宅近くの陸田に水稲を作付けしたことも,飼料として米を使うことを考えるきっかけになったといいます。
 昨年11月の町民祭で豚肉を販売する際の目玉として,米を食べさせて肥育した豚肉を出すことを思いつきました。このときは,あきたこまちやコシヒカリ等のくず米を飼料に15%混ぜて1ヶ月半給与しました。豚の食い込みが良かったことや,消費者の反応も良かったため,本格的に取り組んでみようと思ったそうです。
 平成20年度は自分の陸田を含め地域内でモミロマン30aを試作しました。収穫した飼料用米は玄米の状態で保管し,豚に給与する際に粉砕して配合飼料に添加しています。現在は,飼料用米を10%添加した飼料を出荷前の40日間給与しているとのことです。
 飼料用米を給与した豚肉の味については,昨年12月に茨城町中央公民館で開催された試食会においても良い評価を得ました。
 今年度は飼料用米の作付けを9.7haに増やしました(品種はホシアオバ)。収穫後は,和家さん以外の養豚農家でも給与する計画が上がっているとのことです。

3.豚肉の直売に取り組む
 和家さんは,平成19年3月に直売場「和之家」をオープンし,生産した豚肉を「和之家豚(わのかとん)」の銘柄で販売しています。
 直売部門を統括している貴之さんは,経営主の文雄さんの娘さんとの結婚がきっかけで養豚業に携わるようになりました。
 貴之さんは,あるセミナーで生産者の立場で講演したときに,消費者から「あなたの生産した豚肉はどこで販売しているのか?」という質問を受けたことがきっかけで「自分で生産した豚肉を自分で販売する」ことを決意したそうです。自らを「豚肉職人」と称し,様々なアイディアと持ち前のバイタリティーで豚肉生産・販売の可能性を切り開いています。
 「和之家豚」の名は和家養豚場で手間をかけて育て上げた豚に付けられ,生産者のこだわりがこめられているそうです。
 その「和之家豚」に茨城町産の飼料用米を食べさせ,「和之家豚八十八(わのかとんやそはち)」の名で販売しています。給与できる飼料用米の量が限られているため,今のところ限定生産・販売となっていますが,飼料用米の収量増加とあわせて販売できる豚肉の量を増やす予定だそうです。
 ちなみに,この「和之家豚八十八」を使用した料理が7,8月の期間限定で茨城町内の料理店「大黒家」のランチメニューに登場しました(写真)。肉は柔らかく,もっちりとした歯ごたえで脂身にも甘みがあり,大変満足できる一品でした。