牛群検定事業は、乳用牛の改良や飼養管理改善など、効率的な酪農経営の達成のために実施されていますが、検定成績表には膨大な情報が含まれており、その意味を理解し、経営に活用するためには、体系的な学習や、各数値が示す意味の検討を行う必要があります。そのため、県北農林事務所常陸大宮地域農業改良普及センターでは、茨城県北酪農業協同組合大子事業所牛群検定組合員8名を対象に、牛群検定成績表の活用法を中心とした研究会を開催しています。
 平成21年度の第1回牛群検定利活用研究会は6月4日(木)に道の駅だいご(久慈郡大子町池田)で開催しました。今回は、4月から成績表の様式が変更になったことを受け「新しい検定成績表とその用語」について説明を行いました。さらに「成績表から見える牛群の状態と課題」(講師:県酪農業協同組合連合会生産指導部改良課 秋山氏)、「乳牛の生理と飼料給与」(講師:全国酪農業協同組合連合会購買畜産課 大山氏)の2課題について講習を行いました。
 まず「新しい検定成績表とその用語」として、各様式の特徴や、その選択方法、新様式の新しい用語(MUN値、標準乳量など)、各数値の適正値と目標値、その理由について秋山氏に解説していただきました。
 その後、「成績表からみえる牛群の状態と課題」と題し、自分の牛群が現在どのような状態にあるのかについて、直近の検定成績表から、実際に各自の牛群について評価と検討を行いました(写真1)。
 繁殖成績や体細胞数、乳成分については、大家畜データベースシステムの牛群管理プログラムを用いてグラフ化してあり、全員が視覚的に組合員全体の状況を確認することができました(写真2)。
 続いて「乳牛の生理と飼料給与」について講義が行われました。この講義では、成績表の各数値が持つ意味を、乳牛の消化生理などからより詳細に学びました(写真3)。
 ルーメン内バクテリアの好適pHや、増殖に必要な時間の相違などによって、誤った飼料給与がアシドーシスや肢蹄病の発生につながる理由や、どの飼料成分がどういう機構でどの乳成分になるかなど、改めて「なぜ自分の牛群がこの状態になっているのか」を考えるための基礎知識を習得しました。さらに、これらの知識を踏まえた上での現場でのチェック事項(反芻時の咀嚼回数、採食パターン、給与手順など)や乾物摂取量を左右する要因としてのカウコンフォートについても学びました。「これから暑くなってくる季節。アシドーシス予防や、腹回りの毛刈りなど暑熱対策に努めてください」との言葉に、参加者の多くが「毛刈りなど、できるものから実施してみようと思う」と話していました。
 さらに講習が終了した後、飼料給与ソフトを用いた牛群成績改善のための相談会を実施し、現在の成績を踏まえて、今後どのような点を変更するべきか、具体的な対処法について検討と助言を行いました。

 受講者からは「自分でもある程度わかってはいたが、課題を客観的に指摘してもらうことができてよかった」「他組合員の状況と自分の状況が比較でき、刺激になった」「改めてみんなに相談したり、話し合ったりするきっかけができた」などの声が聞かれました。
 常陸大宮地域農業改良普及センターでは、この研究会で指摘された事項について、個別巡回による改善の支援や助言を行うとともに、組合員に継続して新しい情報を提供できるよう、関係機関のご協力を得ながら今後も研究会を開催していく予定です。
 末筆ながら、ご多忙中にも関わらず丁寧な資料を作成してくださった秋山氏、大山氏、ご協力いただいた県畜産協会のみなさまに感謝の意を表します。

(写真1 個人ごとに成績表を配布しました)

(写真2 乳成分値のグラフ表示)

(写真3 牛の消化機構について学びました)